ミャンマーの景気状況(新政権2年目の2017年の景況感はすこぶる悪化)
2017年12月現在、ミャンマーの景気はすこぶる悪い。
新興国の中でもラストフロンティアと呼ばれるミャンマーの景況感が悪いと言われれば、違和感があるかもしれない。
当地の事業家の意見を集約すると2016年末から2017年前半にかけて景気の歯車は狂い始めたようだ。
米国による制裁(SDNリスト)が完全に解除されたのが2016年10月。正に、景気回復に向けた機運が高まりつつある中で、実際にはその逆を行った。
外資系駐在員からは「資金が回っていない」との悲鳴を聞くことも多い。
統計データは公表されていないものの、小売の既存店は軒並み前年比減であり、不動産開発の新規着工、外資系企業との合弁事業新規成立状況等、目に見えて前年よりも悪化している。
2017年のミャンマーのGDP成長率見通しは、IMFが7.2%、世銀(World Bank)が6.9%。決して大きくは崩れていない。一体これはどういうことだろうか。
コンサルティングファームのローランドベルガー社(Roland Berger)が2016年より発表している事業環境調査が興味深い。2017年12月、第2号の公表が行われ、前年との対比が可能となっている。
調査はミャンマーの現地企業及び外資系企業に対して、今後12ヶ月間の事業環境の見通しをヒアリングしている。
現地企業においては、昨年は76%の企業が「改善」の見通しを立てていたものの、足元では50%と26%の大幅な減少を示している。
また、外資系企業においても、「景気の拡大」を見込む企業は前年の71%から49%と22%減少。
一方、「徐々に悪化」していくと見る事業家は、現地企業及び外資系企業共に15%と以前と比較し無視できない割合となってきている。
これが今のラストフロンティアの現実だ。景気の先行きにポジティブな見方をしている企業は半分に過ぎない。株価が冴えないのも無理は無い。
<Myanmar Business Survey (Roland Berger)>
現地企業 | ||
2016年 | 2017年 | |
急速に悪化 | 0% | 0% |
徐々に悪化 | 1% | 15% |
現状維持 | 23% | 35% |
改善 | 68% | 47% |
急速に改善 | 8% | 3% |
外資系企業 | ||
2016年 | 2017年 | |
急速に悪化 | 0% | 1% |
徐々に悪化 | 7% | 15% |
現状維持 | 22% | 35% |
改善 | 62% | 45% |
急速に改善 | 9% | 4% |
景気悪化の理由について、77%の企業が政府による経済政策が不透明であることを指摘している。
2016年時点では新政権移行に対する漠然とした期待が大きかったこと、また実際に米国による経済制裁の解除等が事業環境に対する楽観的な見通しを与えた。
新政権移行から1年半が経過し、経済界では現政権に対する厳しい見方が広がりつつある。新会社法の運用開始時期の遅れは大きな失望を持って受け止められた。
潮目が変わるタイミングが2018年の早い時期に訪れることを期待したい。
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