ミャンマー投資の話には注意(投資詐欺から身を守る為の知識。上場企業 Listed Companyと公開企業Public Companyの違いとは)
ミャンマー企業への投資を考える際に、投資対象となる企業の法制度上の位置付けを正確に理解しておく必要がある。
でなければ、そもそも投資することが出来ない対象への勧誘を受け、詐欺に陥る可能性さえ否定できないだろう。実際にそうした話は、過去ミャンマーに幾度となくあった。
多少専門的な話も交じるが、以下一般投資家の検討対象になり得るかどうかの観点から、ミャンマー企業を5つのカテゴリーに区分する。
現時点で一般の外国人は、以下の全てのカテゴリーにおいて投資は許されていないものの、2018年8月に予定されている新会社法施行が実現されれば、このうち(1)については投資可能に、また(2)及び(3)については一部限定的に投資可能になる見込みである。
但し、個人的には投資自体が可能であったとしても、(2)については相当程度慎重に、また(3)については証券取引法の適用すら受けないことから投資は避けた方が良いと考える。
1)上場会社(Listed Company):
会社法、証券取引法及び取引所規則の3つに準拠 (取引所において公募が可能)
2)未上場の継続開示の公開企業(Public Company) :
会社法、証券取引法の2つに準拠 (取引所を通さない自己募集による公募が可能)
3)未上場でDICAへの届け出を行っているが継続開示義務を負わない公開企業(Public Company) :
会社法のみに準拠 (証券取引法の公募に該当しない限定的な株式の募集が可能)
4)未上場でDICAへの届け出を行っておらず継続開示義務を負わない公開企業(Public Company) :
会社法のみに準拠 (必要な届出次第で公募は可能)
5)未上場の非公開企業(Private Company) :
会社法のみに準拠 (公募不可)
※ DICAとは、投資資企業管理局(Directorate of Investment and Company Administration)で、法人登記を管轄している当局。
※ (1)の上場会社は必ずPublic Companyという会社ステータス。
<会社法の規定>
ミャンマー会社法(Myanmar Companies Act)では、ミャンマー企業をPrivate Company(非公開企業)とPublic Company(公開企業)に区分している。本定義は新会社法においても変更されない。
Private CompanyとPublic Companyの違いは多く存在するものの、Private Companyは株主数が最大で50名、かつ一般投資家に対する株式の募集行為は出来ない一方、Public Companyは株主数の上限の制限が無く、また株式や社債の投資家向けの一般募集が可能である点が大きく異なる。
上記の通り、Public Companyはその届け出の状況等により(1)から(4)まで区分され、(5)のみがPrivate Companyであり外部から一般投資家の出資を受けることを前提としていない。
会社法の所管は、計画財務省傘下にある投資企業管理局(DICA)であり、Private か Publicかの区分はDICAによって管轄されている。
なお、Public Companyであったとしても、会社法上はDICAへの目論見書(Prospectus)又はこれに準ずる書類(Statement in lieu of Prospectus)の届け出を行わなければ募集行為は行ってはいけないこととなっている。
これが、上記の(3)と(4)の微妙な違いである。
通常(4)の企業も含めてPublic Companyは社名にPublicと付いているため、(4)の企業も一般投資家が買えると思いがちであるため特に留意が必要である。
ミャンマーの公募手続きにおいては、以上の会社法上の届け出と、以下に記載の証券取引法上の届け出とが分かれていることを理解する必要がある。
<証券取引法の規定>
証券取引法では、募集行為を行おうとする企業は、証券取引委員会(SECM: Securities and Exchange Commission of Myanmar)への届け出を行わなければならないとされている(第35条)。
ここでいう募集行為とは、同法施行規則(Securities Exchange Rules)において50名以上に対する勧誘行為を行うことと定義している。
50名は実際に販売する人数では無く、勧誘活動を行う対象であり、50名以上に声掛けをしていれば、実際に買う人が50名に満たなかったとしても募集規定に準拠する必要がある。
通常、公募(一般募集)を行うといった場合、まず証券取引法上の公募に該当する行為と思って間違いない。
従って、先のDICAへの届け出は公募を行う為の十分条件では無く、証券取引法上の届出を行う必要もある。これがまたしてもここで微妙ではあるが、上記の(2)と(3)の違いである。
上場会社となる為には、証券取引法上の届け出を行い、さらにヤンゴン証券取引所(YSX : Yangon Stock Exchange)への上場申請を行い、その審査を通過する必要がある。(2)のうちの一部が(1)へ含まれる。
<ミャンマーの公開会社(Public Company)の状況>
前述のとおりPublic Companyは会社法上の規定であり、会社法が出来た1914年からある概念である。
Public Companyの歴史は文献上明らかでは無いが、現存するPublic Companyは全て1990年代以降に設立されたものであり、それ以前のPublic Companyは存在しない。
現在ミャンマーでは200-300社のPublic Companyが存在するものの、その多くは2011年の民政移管(USDP政権移行)後に設立されたものであり、2011年時点においては21社しか存在しなかった。
これは前政権(USDP政権)が経済的な民主化を進めようとする取り組みの中で、透明性の高いPublic Companyの推進を強力に図ったことが成果として現れたものである。
2012年4月にMAPCO(Myanmar Agribusiness Public Co., Ltd.)が民政移管後の初のPublic Companyとして設立され、その後急速にPublic Companyの設立が加速した。
なお、会社法上はPrivate CompanyがPublic Companyへ企業形態を変更することは認められている。
但し、実際にPublic Companyへの変換を果たした企業はこれまで10社も無く、圧倒的に多くの企業はPublic Companyとして新設されている。また、設立したは良いものの、その後実際の事業は行われず休眠状態になっているPublic Companyも多く存在するので、留意が必要である。
<DICAによって公募が可能と公表されている企業>
2017年8月、DICAは投資家保護の観点からDICAへの届け出が行われている企業55社を公表している。これは上記の(1)から(3)までを含む企業のリストである。
No | Company Name |
1 | Myanma Economic Holdings Ltd. |
2 | First Private Bank Ltd. |
3 | First Myanmar Investment Co., Ltd. |
4 | C.B Bank Ltd. |
5 | Myanmar Citizens Bank Ltd. |
6 | Forest Products Joint Venture Corporation Ltd. |
7 | Small & Medium Industrial Development Bank Ltd |
8 | Global Treasure Bank Public Co., Ltd. |
9 | National Development Company Group Ltd |
10 | Myanmar Information & Communication Technology Development Corporation Ltd. |
11 | Golden Land East Asia Development Ltd. |
12 | Myanmar Agribusiness Public Corporation (MAPCO) Ltd. |
13 | Myanma Agricultural & General Development Public Ltd. |
14 | Golden Myanmar Airline Public Co., Ltd. |
15 | Myanmar Edible Oil Industrial Public Corporation (MEICO) Ltd. |
16 | Asia Business Synergy Public Co., Ltd. |
17 | Great Hor Khan Public Co., Ltd. |
18 | Myanmar Telecommunication Network Public Co., Ltd. |
19 | New City Development Public Co., Ltd. |
20 | Myeik Public Corporation Ltd. |
21 | Myanmar Technologies And Investment Corporation Ltd. |
22 | Grand Guardian Insurance Public Co., Ltd. |
23 | Kaytumadi Development Public Co., Ltd. |
24 | Rakhine Development Corporation Ltd. |
25 | Asia Green Development Bank Ltd. |
26 | Mandalay Myotha Industrial Development Public Co.,Ltd. |
27 | Elite Telecom Public Co.,Ltd. |
28 | Myanma Tourism Development Public Co., Ltd. |
29 | Myanmar Economic Development Corporation Public Co., Ltd |
30 | Myanmar Thilawa SEZ Holding Public Co., Ltd |
31 | Myanmar Irrawaddy Development Public Co., Ltd |
32 | Myanmar Native Land Public Co., Ltd |
33 | Oleander Construction Group Public Co., Ltd |
34 | Ayeyar Pathein Development Public Co., Ltd. |
35 | Kayin State Development Public Co., Ltd. |
36 | Myanma Motion Picture Development Public Co., Ltd. |
37 | Industrial Resources Development Public Co., Ltd. |
38 | Golden Zaneka Public Co., Ltd |
39 | Yatanarpon Teleport Public Co., Ltd . |
40 | Cherry Yoma Group Public Co., Ltd. |
41 | Htawara Aung Myae Public Co., Ltd. |
42 | Danya Gone Yee Development Public Co., Ltd. |
43 | Myanma Tourism Bank Public Co.,Ltd. |
44 | Myanmar Automobile Development Public Co.,Ltd |
45 | Hanthawady Green Land Public Co.,Ltd. |
46 | Farmers Development Public Bank Co.,Ltd. |
47 | Myanmar Industries Alliances Public Co.,Ltd. |
48 | Ayeyarwaddy Farmers Development Bank Public Co.,Ltd. |
49 | Myanmar Construction And Development Public Co.,Ltd. |
50 | Royal Yatanarpon Telecom Public Co., Ltd |
51 | WPG Capital Public Co.,Ltd. |
52 | Maubin Development Public Co., Ltd. |
53 | Myanmar Payment Union Public Co., Ltd. |
54 | Yangon Bus Public Co., Ltd. |
55 | Myanmar Agro Exchange Public Ltd. |
この記事へのコメントはありません。