ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

Stay or LeaveからActivate or Leaveへ(名義取締役の禁止を通じた事業活性化策)

今般、1月17日付で名義株主(Nominee Shareholders)及び名義取締役(Nominee Directors)の禁止を明確化するDirectiveがDICA(Directorate of Investment and Company Administration)により発出されました(即日施行)。

(原文はこちら

名義株主は古くからトラブルの元として知られ、要は不動産の購入や許認可取得等の外資規制を免れる為に、実質的なオーナー(資金提供者)とは別にミャンマー人の名義で株主登記を行うことです。従前から認められてはおらず(従前からあくまでも登記上の株主が所有者として認識され、名義人と実質所有者が揉めた場合、当然にして名義人が所有権を認められ得る)、今般の措置に特段の目新しさは無く、改めて周知したとの意味合いが強いと思われます。

今般の発表の主な趣旨は、むしろ名義取締役の禁止を明確化する措置と考えられます。名義取締役とは、2018年8月施行の現行会社法において新設された取締役の常駐(Ordinarily resident)規定(年の183日以上をミャンマーに滞在する)を回避する事等を目的に、外部業者(例えば、会計事務所や法律事務所等)に常駐取締役をアウトソースするものです。実体の無い取締役を就任させることは本来の法の趣旨に反するものである一方、コロナ・クーデターにより駐在員を現地に留める(または現地に戻す)ことが出来ない、或いは何らかの理由でローカル社員を取締役に就任させることが出来ない外資系の企業では慣習的に広く用いられてきた手法でありました。

今回、当局がこのタイミングで発表したことには、コロナによる渡航制限が緩和され駐在員がミャンマーに戻れる(滞在出来る)環境が広がったことに加え、軍事政権としての以下の2つの意図が含まれている可能性が考えられます。

(1)外資系企業による事業コミット要請

クーデター以後、軍事政権としては経済活動の活性化に向けた外資の呼び込みを推進してきた一方、西側諸国等の経済制裁発令、或いは国内経済環境の先行き不透明感が強まる中、新規の進出は期待薄な状態が続いています。ミャンマー内に残る既存外資系企業の事業の活性化を図ることがより現実的・効率的と考えられ、クーデター後にリモートコントロールを続ける外資系企業に、駐在員を戻す事を通じた事業コミットを求めるとの意味合いが読み取れます。

(2)ミャンマー人主体の経済構造への転換

クーデター後の現地の治安情勢、或いは収支見通し(駐在員コストは各社大きな負担を伴う)の悪化から、現実的には駐在員を置き続けることが困難な企業も多いのが実情です。そのような企業に対しては、外部業者を用いた実効性の薄い取締役では無く、自社のミャンマー人社員に取締役としての権限を委譲することを通じて、ミャンマー人主体(外人に頼らない)の経済運営体制への転換を図っていく意味合いがあるかもしれません。

個人的には、前者(1)の意図が強いと考えており、既存外資企業の活性化無くして、新規の外国投資の流入は無いとの発想転換があったものと考えています。その意味では、これまでStay or Leaveで頭を悩ましていた外資系各社に、ActivateさせるかLeaveするかの二者択一を迫るものとも読み取れます。また、会社法・倒産法を取り巻く法制度上の問題として、現状法人清算を合法的に行うことは出来ず、Leaveするための手段も塞ぐことで、実質的にはActivate一択に追い込むという強引ささえ感じ取れます。

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