2020年ミャンマー総選挙の見通し(NLD政権の勝算の行方を大胆予想)
アウン・サン・スー・チー率いる 国民民主連盟(NLD:National League for Democracy)による5年間の政権運営を国民に問う次回総選挙が5ヶ月後に迫る。
新型コロナの感染拡大により総選挙の延期も取り立たされてはいるが、現状11月に予定どおり行う公算が高い。
(※追記 : 総選挙の実施日は2020年11月8日で決定)
昨年11月には、ミャンマーの選挙構造と選挙の見方を解説したが、今回は大胆にも、更に踏み込んだ見通しに進みたい。今後数ヶ月は日本のメディアでもミャンマーの総選挙が取り上げられる可能性が高いため、事前に注目のポイントを抑えておこう。
(選挙システムの概要については、先にこちらを読んでから本記事にお進みください。)
<国会議席を4つの区分で捉える>
少々 おさらいになるが、ミャンマーの国会は、上院にあたる「民族代表院」(Amyotha Hluttaw)と、下院の「人民代表院」(Pyithu Hluttaw) で構成される。上院は224名(改選議席:168、国軍:56名)、下院は440名(改選議席:330、国軍:110)であり、選挙で争われるのは、このうち改選議席の498席(上院168名+下院330名)だ。
大統領の指名権限を持つためには、連邦議会(上院224名+下院440名)の合計664名において過半数となる333名を得る必要がある。大統領さえ選出できれば、連邦政府の行政府(大臣の指名)及び地方政府の行政府(首長の指名)のコントロールが可能になる。したがって、333の議席数が決定的に重要であるので、まずはこの数値を覚えておきたい。要すれば、改選議席の498のうち、3分の2超にあたる333を現政権が単独で獲得出来るか否かがポイントとなる。 (注:実際には選挙が行われない地域があるため全体の数は多少の変動有り)
ちなみに、ミャンマーでは上院と下院は基本的に同じ権限を持っている。大統領の指名権限以外にも、予算決定は連邦議会でなされる。上院と下院の議決が分かれた場合は連邦議会での採決となるため、結局は連邦議会における333が鍵となるわけだ。
次に、上院・下院の区分とは別に、選挙区の構成としては14の行政区があることを念頭におこう。国民の7割を占めるビルマ人が多く居住する7管区と、3割を占める少数民族が多く居住する7州だ。当然、14の行政区それぞれについて上院と下院の選出がある。したがって、大きなブロックに分けるとすると、以下の4つの区分として捉えることが出来る。上院・下院という横軸と、7管区・7州という縦軸でマトリックスが組める。
1) 7管区における上院議席(84議席)
2) 7管区における下院議席(207議席)
3) 7州における上院議席(84議席)
4) 7州における下院議席(116議席)
※ 下院議席の合計は本来330であるが、ミャンマーでは内戦の継続により危険な地域が残されており、選挙開催が物理的に困難な地域がある。上の数値は、前回総選挙において投票が行われた地域(323タウンシップ)をベースとした議席数。
<注目の区分は、ずばり「州の下院議席」>
結論から言えば、今回の選挙で注目は、上記の4つの区分のうち(4)の州における下院議席と考えている。更に言えば、 カチン州とカイン州の2州における下院議席が勝敗を分けるのでは無いかと推察している。
何故このような結論に至ったかについて、少々長くなるが以下解説していきたい。まずは、NLDが前回の2015年選挙において上院と下院でそれぞれ獲得した議席を以下の表で見てみよう。
(NLDの上院における議席獲得状況)
議席数 | 獲得数 | 獲得率 | |
ザガイン管区 | 12 | 12 | 100.0% |
マンダレー管区 | 12 | 10 | 83.3% |
マグウェー管区 | 12 | 12 | 100.0% |
ヤンゴン管区 | 12 | 12 | 100.0% |
バゴー管区 | 12 | 12 | 100.0% |
エーヤワディ管区 | 12 | 12 | 100.0% |
タニンダーリ管区 | 12 | 12 | 100.0% |
7管区計 | 84 | 82 | 97.6% |
チン州 | 12 | 9 | 75.0% |
カチン州 | 12 | 10 | 83.3% |
ラカイン州 | 12 | 1 | 8.3% |
シャン州 | 12 | 3 | 25.0% |
カヤー州 | 12 | 9 | 75.0% |
カイン州 | 12 | 10 | 83.3% |
モン州 | 12 | 11 | 91.7% |
7州計 | 84 | 53 | 63.1% |
7管区・7州合計 | 168 | 135 | 80.4% |
(NLDの下院における議席獲得状況)
議席数 | 獲得数 | 獲得率 | |
ザガイン管区 | 37 | 36 | 97.3% |
マンダレー管区 | 36 | 31 | 86.1% |
マグウェー管区 | 25 | 25 | 100.0% |
ヤンゴン管区 | 45 | 44 | 97.8% |
バゴー管区 | 28 | 27 | 96.4% |
エーヤワディ管区 | 26 | 25 | 96.2% |
タニンダーリ管区 | 10 | 10 | 100.0% |
7管区計 | 207 | 198 | 95.7% |
チン州 | 9 | 7 | 77.8% |
カチン州 | 18 | 12 | 66.7% |
ラカイン州 | 17 | 4 | 23.5% |
シャン州 | 48 | 12 | 25.0% |
カヤー州 | 7 | 6 | 85.7% |
カイン州 | 7 | 6 | 85.7% |
モン州 | 10 | 10 | 100.0% |
7州計 | 116 | 57 | 49.1% |
7管区・7州合計 | 323 | 255 | 78.9% |
上院・下院、それぞれの上半分が7管区、下半分が7州における選挙結果。NLDは7管区において、上院で97.6%、下院でも95.7%と圧倒的な議席獲得率を誇っている。これは強いなどというレベルでは無い。野球で言えばノーヒットノーラン級だろう。
一方、7州における議席獲得率は、上院で80.4%、下院で78.9%であり、高いとは言え、7管区ほどでは無い。
NLDはビルマ人を中心としたグループではあるが、必ずしも少数民族出身者が含まれないわけでは無く、特に7州においてはNLDは優先的に少数民族候補者を出していることから、州においても依然としてNLDが強いわけだ。 ただ、上記の管区と州における微妙な議席獲得率の違いが、後々の説明で重要になる。
上の話は議席を獲得した割合であったが、次に、NLDに対する得票率を、上院・下院それぞれ見ていこう。こちらを見ると、議席獲得率とは全く異なる姿が見て取れる。
下の表を見ると、まず、7管区では、上院64.2%、下院63.6%であり、概ね64%程度の得票率だ。
一方、7州では、上院33.8%、下院33.5%と、概ね34%程度の得票率となっている。
議席数の獲得割合とは大きく異なるイメージでは無いだろうか。
これは、つまり小選挙区制の歪みが如実に現れているということなのだ。
7管区では、議席をほぼ完全に独占した形ではあるが、得票率は64%、7州に至っては8割近い議席数を獲得は出来たが、得票率は34%程度に過ぎない。要はNLDは効率的に議席を稼げたわけだ。
(NLDの上院における得票率)
得票率 | |
ザガイン管区 | 68.8% |
マンダレー管区 | 61.7% |
マグウェー管区 | 66.3% |
ヤンゴン管区 | 72.3% |
バゴー管区 | 61.6% |
エーヤワディ管区 | 54.5% |
タニンダーリ管区 | 69.8% |
7管区平均 | 64.2% |
チン州 | 38.3% |
カチン州 | 46.5% |
ラカイン州 | 16.6% |
シャン州 | 28.3% |
カヤー州 | 48.5% |
カイン州 | 46.7% |
モン州 | 49.4% |
7州平均 | 33.8% |
(NLDの下院における得票率)
得票率 | |
ザガイン管区 | 68.2% |
マンダレー管区 | 60.8% |
マグウェー管区 | 66.6% |
ヤンゴン管区 | 70.9% |
バゴー管区 | 61.3% |
エーヤワディ管区 | 54.0% |
タニンダーリ管区 | 71.4% |
7管区平均 | 63.6% |
チン州 | 37.6% |
カチン州 | 46.4% |
ラカイン州 | 16.2% |
シャン州 | 27.4% |
カヤー州 | 55.1% |
カイン州 | 45.3% |
モン州 | 50.1% |
7州平均 | 33.5% |
<議席獲得率と得票率の大差の背景>
それでは、何故議席の獲得割合と得票率にこれほどまでに大きな差が生まれたのか?それは、票が割れたという理由が大きい。
むろん、NLDが大勝を果たしたことの背景は様々ある。国民の民主化への熱狂に加えて、2015年は建国の父アウンサン将軍(アウン・サン・スー・チーの父。1915年-1947年 )の生誕100年祝いに託けた選挙キャンペーンも間違いなく効いてはいた。
が、それだけでは、単独過半数獲得には至らなかったはずだ。背景には、第二局となるはずの、 旧政権政党であった連邦団結発展党(USDP:Union Solidarity and Development Party) 、また少数民族政党が共に弱すぎたことに加え、互いにぶつかったことで票が割れてしまい、結果としてNLDを利する形になったためと解釈することが出来る。
USDPの議席獲得数が極めて低かったことから、USDPに対する国民の支持が全く集まっていなかったと勘違いしている人も多いが、これは明確に誤りだ。USDPの得票率と議席獲得率の関係は下の表のとおりであるが、USDPは7管区において、上院で29.1%、下院で29.2%、また7州においては上院で24.8%、下院で25.1%としっかりと票を重ねている。
概ね全体の25-30%の得票率は得られているわけであって、USDPの支持基盤は決して無視できない割合だ。単に小選挙区制の弊害により死票が極めて多かったことが、USDPに極めて不利に働いた。例えば、マグウェー管区のように、上院・下院共に28%程度の得票率を得られているにも関わらず、議席数が共にゼロの地域もあるぐらいだ。
(USDPの上院における得票率と議席獲得率)
得票率 | 議席率 | |
ザガイン管区 | 25.3% | 0.0% |
マンダレー管区 | 31.8% | 16.7% |
マグウェー管区 | 27.7% | 0.0% |
ヤンゴン管区 | 22.8% | 0.0% |
バゴー管区 | 29.6% | 0.0% |
エーヤワディ管区 | 37.4% | 0.0% |
タニンダーリ管区 | 22.9% | 0.0% |
7管区平均 | 29.1% | 2.4% |
チン州 | 22.3% | 8.3% |
カチン州 | 17.1% | 0.0% |
ラカイン州 | 22.1% | 8.3% |
シャン州 | 28.1% | 25.0% |
カヤー州 | 25.6% | 16.7% |
カイン州 | 25.0% | 16.7% |
モン州 | 25.9% | 0.0% |
7州平均 | 24.8% | 10.7% |
(USDPの下院における得票率と議席獲得率)
得票率 | 議席率 | |
ザガイン管区 | 25.3% | 2.7% |
マンダレー管区 | 32.5% | 13.9% |
マグウェー管区 | 27.8% | 0.0% |
ヤンゴン管区 | 22.1% | 2.2% |
バゴー管区 | 29.8% | 3.6% |
エーヤワディ管区 | 37.5% | 3.8% |
タニンダーリ管区 | 23.8% | 0.0% |
7管区平均 | 29.2% | 4.3% |
チン州 | 23.8% | 0.0% |
カチン州 | 25.2% | 16.7% |
ラカイン州 | 22.9% | 5.9% |
シャン州 | 25.3% | 31.3% |
カヤー州 | 25.7% | 14.3% |
カイン州 | 26.1% | 14.3% |
モン州 | 26.7% | 0.0% |
7州平均 | 25.1% | 18.1% |
少数政党について言えば、明らかに乱立し過ぎたきらいがある。
総選挙への参加政党数は、2010年の37政党から、前回の2015年には91政党へと大幅に増加した。軍政に終わりを告げようとの熱狂に包まれた前回選挙では、特段の準備も出来ていない政党が雨後の筍のように生まれた。小選挙区制において、こういった新興政党が議席を獲得することは容易では無く、実際に議席を全く獲得出来ず終わっていった政党も多い。こうした少数民族政党とUSDPが票を食い合ったことが、特にUSDPの無残な結果に繋がったと見て良いだろう。
<少数民族政党の勃興>
2020年総選挙の大きな注目ポイントは、少数民族政党がどこまで議席数を伸ばせるかにあるだろう。この点については、2015年の選挙結果を踏まえて一定の作戦変更がなされる可能性が見込まれる。
再び上で示したNLDの獲得議席数及び得票率を眺めて頂くと、NLDが弱かった地域が見えるくる。上院・下院共に、ラカイン州とシャン州の2つがそれである。議席獲得率が圧倒的に低いのが目に映るだろう。ラカイン州では、上院で1議席(8.3%)、下院で4議席(23.5%)、またシャン州では、上院で3議席(25.0%)、下院で12議席(25.0%)であり、他の地域に比べて圧倒的に低い。この背景を理解することが、2020年選挙に向けた見通しの上で極めて重要だ。
まず、ラカイン州については、ラカイン民族党(ANP : Arakan National Party)が、上院で10議席、下院で12議席の合計22議席を獲得した。NLDの獲得議席数よりも遥かに多く、ラカイン州ではANPが圧倒的なプレゼンスを有すことが明らかだ。ANPの合計議席数は、国政において、NLDとUSDPに次ぐ議席数となっており、結果的に地方政党で最も発言力が強くなった。
何故、ANPがここまでの勝利を収めたかと言えば、ラカイン族(アラカン族)の民族意識の高さ(ある種の排他性)に加えて、政党の統一化が挙げられる。ANPは、もともとラカイン州にあった2つの政党、ラカイン民族発展党(RNDP : Rakhine Nationalities Development Party)とラカイン民主連盟(ALD : Arakan League for Democracy)が2013年に統合して出来た党であり、ラカイン族を代表する政党として分かりやすい。
次に、シャン州についてであるが、ここではラカインにおけるANPの存在とは異なる現象が生じた。
旧政権政党であるUSDPが、上院・下院合わせて18議席を獲得しており、これはNLDの15議席よりも多く、USDPがNLDの議席数を上回っているのはシャン州のみだった。
シャン州を代表する民族政党としては、シャン民族民主連盟(SNLD : Shan Nationalities League for Democracy)が 上院で3議席 、下院で12議席、の合計15議席を獲得した。同州には、他にも少数民族政党が存在するが、SNLDに比較的票が集まったことが、NLDに対抗出来た理由だろう。
別の角度から見れば、NLDとSNLDが票を分け合ったことが、結果的に組織力のあるUSDPを利したと見ることも出来るかもしれない。SNLDは、ラカインにおけるANPほど圧倒的な強さは持たない一方、他の州の民族政党ほど弱くなかったことで絶妙なパワーバランスが引き起こされて生じた現象と理解することも出来る。
上記のような2015年総選挙におけるラカイン州とシャン州のある種の成功モデルは、次回総選挙では他の州でも繰り広げられる可能性が見込まれる。
<打倒NLDの勝算は?>
ラカイン州とシャン州を除く5州においてNLDが圧勝した背景は、有力な地方政党がなかったことが大きい。少数民族の中には、長年続く内戦を背景として、軍と近いUSDPを嫌う層も多く見られ、消去法的にNLDに票が流れた割合も多いと推察される。また同時に、少数民族政党間で、互いに食い合ったことで票が割れたことも示唆される。このことが、NLD一択を生み出した。
議席を獲得出来なければ何の発言権も持たない、或いは政党としての存在価値が無いことを学んだ少数民族政党は、2020年選挙ではその反省を活かしてくるのでは無いかと思われる。
NLDにとって最悪のシナリオは、7州において、USDPと少数民族政党が選挙協力を行うことであると考える。これにより、NLDを破ることが現実的となる可能性が高いからだ。両連合のフィロソフィーの違いや長年の軋轢からすれば、決して楽な提携では無いため、現実性は高いとは言えないが、仮に起こればWin-Winとなれる可能性は高い。この場合、7州におけるNLDの議席数は、前回選挙より大幅に下回ることが見込まれ、全体の勝敗ラインに大きく影響してくるだろう。
<勝算ラインの行方>
先にあげた「カチン州とカイン州の2州における下院議席が勝敗を分ける」との見通しにいたった理由をここからようやく述べることが出来る。
今一度、NLDが前回獲得した議席数と得票率を見てみよう。
先にあげた4つの区分のうちの
1) 7管区における上院議席(84議席)
2) 7管区における下院議席(207議席)
の2つについては、NLDはやはり盤石と見て良いだろう。全体としてのNLDへの支持は大きくは落ちてはいないと思われることから、多少なりとも得票率が下がったところで、第二局が7管区において存在感を高めることは容易では無い。
1)の議席獲得率は前回の97.6%とほぼ同等の95%程度とすると、80議席の獲得に至る。
2)の議席獲得率は前回の95.7%からやや減少し90%とすれば、186議席の獲得に至る。7管区における上院・下院の合計議席はこの場合、266議席となる。
仮に266議席が7管区の獲得議席とすると、7州において67議席 (333-266) を獲得すれば良いことになる。
これまで述べてきたとおり、州においては、NLD、USDP、民族政党の票が相当逼迫している状況であるため、わずかな得票率の差が、大きな議席獲得数を動かしかねない。選挙協力が起こると一気に情勢が変わるため、現時点で予測することは難しいが、現時点の見通しとしては以下のとおりとなる。特にUSDPの組織力がどこまで維持できているかが全体のバランスに大きく影響すると思われる。
それでは7州の上院・下院それぞれについて見ていこう。
3) 7州における上院議席(84議席)
4) 7州における下院議席(116議席)
上記の合計200議席の67議席(333-266)を獲得するためには、議席獲得率33.5%を達成すれば良いわけで、NLDにとって容易いことのように映るかもしれないが、これが実はそうでも無い。
まず、上院について言えば、NLDの議席獲得率は前回80.4%であったものの、これを今回維持するのは不可能だろう。理由は、2015年選挙でNLDの得票率が5割を超えている州が無かったことだ。仮にシャン州と同じ3割程度まで得票率が下がるとすれば、NLDの議席獲得率は、25%程度(前回のシャン州の議席獲得率)まで急激に下り得る。
前回80.4%であったものが25%まで下がるという見通しは悲観的すぎると思われるかもしれない。 ただ、現にUSDPは、マグウェー管区で28%の得票率を得ながら、議席獲得率0%となった実績がある。本来、上院は少数民族優位な設計にしている為、NLDが7州の上院での議席割合が25%となることに大きな違和感は無い。むしろ、前回2015年選挙では、このブロックについてNLDは相当ラッキーだったわけだ。
仮に州全体での議席獲得率が25%となった場合、上院では21議席(84✖️25%)の獲得に留まる。先の67議席を踏襲すれば、下院で必要となってくる議席数は残り46議席(67-21)となる。
そこで最後に残されたのが、(4)の7州の下院だ。ここに結論をもっている。 ここが最も大きなブレが生じる可能性が高い。議席数のインパクトも上院より大きい。
改めて下の表を見て深堀りしていこう。
(7州の下院の状況:改選議席数とNLDの前回得票率)
改選議席数 | 前回得票率 | |
チン州 | 9 | 37.6% |
カチン州 | 18 | 46.4% |
ラカイン州 | 17 | 16.2% |
シャン州 | 48 | 27.4% |
カヤー州 | 7 | 55.1% |
カイン州 | 7 | 45.3% |
モン州 | 10 | 50.1% |
7州計 | 116 | 33.5% |
上の7州を3つのグループに分けたい。①敗退濃厚グループ、②踏み留まり期待グループ、③どっちいくか不明グループ、とする。不謹慎だが、表現の分かりやすさに重きを置く。
①はラカイン、シャンに加えチンも入りそうだ。既に得票率が4割を切っている。大票田のシャンが入っていることはNLDにとって極めて痛い。
②は得票率が5割を超えていたカヤーとモン。多少崩れても議席の確保は固そうなグループ。
そして、問題となるのがカチンとカインであり、③のグループに入ってくる。得票率が40%台で、どっちに転ぶか読みづらい。
①には、議席獲得率25%(前回のシャン州の議席獲得率)を適用すると18.5議席、②には議席獲得率85%(前回のカヤーの議席獲得率)を適用すると14.5議席、で合わせて33議席となる。先の46議席から33を引けば、残り11議席を、③のカチン(議席数18)とカイン(議席数7)を合わせた25議席のうちで約半数を獲得出来るかどうかということになる。ここが①の負け組に入るか、②の勝ち組に入るかが読みづらく、ここが勝敗を左右するのでは無いかというのが、今回のこの長ったらしい文章の結論である。
以上を簡潔にまとめれば、
小選挙区制が生み出す偏りが、
7管区ではNLDに有利に働き、
7州では逆にNLDに不利に働くことで、
勝敗の行方は「微妙」。
というなんとも情けない結論だ。
今後、投票日に向けて政党間の活発な駆け引きが繰り広げられ、選挙協力の議論も進むだろう。
アップデートがあり次第、改めてシェアしたい。
関連記事 : ミャンマーの政治構造(2020年総選挙で様子見姿勢の投資家が動き出す。選挙システムをわかりやすく解説) 2019年11月13日
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