ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

年末のご挨拶(Trust Venture Partners)

各位

相変わらず年の瀬を感じさせないヤンゴンの気候の中、激動の2021年がまもなく終わりを迎えます。

コロナ禍のクーデターはミャンマー経済の土台を根本から覆し、ミャンマーに関わる多くの日系企業・関係者の皆様が、出口の見えないトンネルの中で、迫り来る2022年に向けて懸念を深められていることとお察し致します。2023年8月の総選挙が一つのマイルストーンとして位置付けられる一方、民主化とは程遠い選挙によって一体何が変わるのかにも疑問をお持ちの事と思います。

私が初めてミャンマーに来た2012年、現地の銀行頭取との面談の中、「ゲームのルールが変わった」と言われた事を記憶しています。民政移管後間もない時期、閉鎖的な経済構造から、突如自由で開かれたビジネス環境への転換が図られました。

あれから9年、本日ヤンゴン証券取引所の上場企業の会長との面談の中、全く同じ発言がなされたことが印象的でした。また、短・中期的には自由主義国家との関係改善が難しいことから、「今後は中国とのビジネス構築を深める。それ以外に道は無い(We have no choice)」との言葉は、クーデターの現実から目を背け続ける私への警告のようにも受け取れました。

一見すると全てが止まったかに見えるミャンマー経済ですが、足元では既に大きな構造転換が着実に始まっています

クーデター後の国内外の世論においては、ミャンマーでビジネスを行うこと自体に対する一定の批難が見られました。また昨今「ビジネスか人権か」という議論もあります。ただ、これはそもそも誤った問いかけかもしれません。二者択一の問題では無く、ビジネスを通じて人権、雇用、強いては人の命を守ることにつながる側面は確実にあり、失業・貧困に苦しむミャンマーの人を救うのは、食料を送るなどのその場しのぎの人道支援だけでは不可能です。

軍の暴虐を容認することはひとかけらも無い一方、政治家でも学者でも無い「ビジネスパーソン」として求められることは、目の前の現実とその方向性に真摯に向き合っていくことにあろうかと感じます。ネガティブな感情は2021年に置き去りにし、新たな年は建設的な感情をビジネスの現場に向けていくことが求められているようにも思います。

クーデターによる軍事政権への逆行は、国際社会からの支援、FDI、取引の停止等により経済構造を確かに一変させました。しかし、変わっていないものも多くあります。ミャンマーの地政学的な位置付けは1ミリたりとも動いておらず、54百万人の人口が突如いなくなったわけでもありません。そこには、勤勉な若者たちが、自国の問題に真摯に向き合いながら生き残りの道を模索している姿があります。証券市場では「人の行く裏に道あり花の山」という格言があります。弊社が「ミャンマー再生ファンド(Myanmar Revitalization Fund)」を立ち上げた理由も正にそこにあります。経済の発展の上で、自由主義国家体制が相対的に優位という「常識」は、冷戦終結から30年超経つ今日、中国の台頭により怪しくなってきています。

無論、金融機能麻痺等により現実的にミャンマーでの事業遂行が困難であることは事実です。弊社におきましても、ミャンマーに対するコミットは維持しつつ、今後は「北ASEAN」(タイ・ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー)へのリージョナル展開を図って参ります。

この地域を選択した背景として、今回のミャンマーをめぐる国際情勢において、全会一致・内政不干渉の原則を持つASEANの機能不全が印象付けられたことがあります。「北ASEAN」とは車輪の再発明ではなく、従前からあるメコン流域5か国を指します。歴史的な関りは深く、いくつかの共通点もあります。中国との地理的な緊密さ、東西経済回廊における互恵関係、仏教を主流とした国民性、また、今回のミャンマークーデターにより5か国全てが権威主義的な政治体制となりました。仮にASEANがいつか割れるとすれば、南北での事実上の分断の可能性も個人的には一つのシナリオとして想定しています。

20年前、ASEANにとっての貿易相手国は上から米国、日本、中国でありました。しかし、この20年間で中国の貿易額は8倍超に達し、今や2位の米国と3位の日本の合計額を中国が1国で占めるまでの存在感に飛躍しました。いまやASEANが中国の経済圏に取り込まれつつある現実は疑いようもありません。いまだに「ジャパンアズナンバーワン」で止まっている日本人は、もはやアンモナイト的存在かもしれません。

仮に、米中デカップリングが今後数十年続くトレンドであるとするならば、日本としてASEANにどのように向き合うのかが一層重要になってきます。そのような中、弊社では新たな法人として「アセアネラ(AseanEra)」を設立しており、今後は特に北ASEANへのリージョナルフォーカスを進めて参る予定です。

2022年が日系各社様の増々の飛躍の年になることを祈念致します。

弊社としても皆様の事業遂行のご協力が出来るよう、ミャンマーに留まらず一層精進して参る所存です。

引き続き変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

どうぞ良い年をお迎えください。

Trust Venture Partners

後藤 信介

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