ミャンマー事業撤退の実際(法人清算・法人株式売却の選択肢)
乾季に入り晴れ間が広がる一方、ミャンマー経済には晴天の兆しは見えません。
ご承知のとおり、ミャンマーを取り巻く経済環境は一層厳しさを増しています。特に、クーデター以降、国内における外貨不足は深刻化しており、中国等へ向けた対外債務の返済やエネルギー購入のために、手段を選ばない外貨政策、実質的な外貨接収が横行してきています。外資100%企業の中でも現地通貨への強制兌換は進んでいます。
本年4月のミャンマー中銀(CBM)からの強制兌換にかかる指針が公表される前までは、来年8月の総選挙の結果を見守る姿勢であった日系企業の中にも、撤退を具体的に検討される企業様が増えてきた印象を受けます。為替問題と銀行の機能不全は、オフショア決済が可能な一部企業を除き、業界を問わず事業の持続可能性を蝕み続けています。短期的な回復には否定的な見方が大勢を占めていると言えます。
確かに、ミャンマーの外貨不足は一時的なものでは無く、マクロ経済の構造的問題と言えます。ミャンマーの国際収支を支えてきたFDI/ODA等の短・中期的な回復は見込めず、従って接収した外貨が再び枯渇するのも時間の問題でしょう。軍事政権の立場からすれば、既にある国内外貨を流出することは決して許容出来ず、従って短・中期的に”銀行システム”を用いた海外送金が可能になるということは無いだろうとの見方が強まっています。
このような中、日系企業の皆様方より、法人整理について、或いは国外移転出来ない現地預金・現金の資産保全策にかかるご相談が増えています。
法人整理、特に会社清算については、弊社でもご支援はさせて頂いておりますものの、清算には現状主に以下の課題が想定され、実務上の運用可能性は必ずしも高いとは言えない状況と認識しています。
・清算手続きには通常半年~1年程度の期間が必要となるものの、当該期間中に公定レートと実勢レートの乖離が進行する可能性は高く、清算手続き終了時における実質価値の大幅な低下が見込まれること
・現状、清算手続きは会社法によって実務上進められているところ、本来の倒産法の運用が清算手続きの途中において生じる可能性も考えられ、手続き進行そのものの有効性が問われるリスクがあること
・清算手続き(登記抹消手続き)が完了したとしても、残余財産の海外送金については外国為替監督委員会(FESC : Foreign Exchange Supervisory Committee)の認可が必要となり、現状弊社が把握し得る限り、残余財産の分配について送金許可が出た事例は無いこと
・マネーロンダリングを審査するFATF(Financial Action Task Force)がミャンマーをブラックリスト入りする可能性は高く(審議状況の発表は10/21に予定)、海外送金に向けた銀行取引は一層困難になることが見込まれること
不透明要因および手続きの煩雑性が極めて高い会社清算に対して、「国外での外貨決済を前提とした法人株式の売却」は一つの有効な代替策となり得ます。国外移転が出来ない預金を含めた法人そのものを売却することにより、実質的に国外で外貨を回収することが可能となります。弊社では、各社様の実態に合わせて弊社による株式の買取り、或いは海外での決済が可能な投資家への紹介を行っております。撤退の方針をお持ちの企業様に対しては個別に状況をお伺いした上でご提案を申し上げます。
また、弊社では、新たにミャンマー資産保全ファンド(Myanmar Asset Protection Fund)※を設立し、代替資産を組み合わせたポートフォリオ形成による資金の安全運用を行っていくことと致しました。特に、現状既にMMKでの資産保有をされている企業様につきましては、将来大幅な損失計上が予期され(日本の上場法人の連結上は公定レートベースでの子会社株式の価値認識が原則となるため、四半期での為替差損自体は免れる)、2,900Ks/$の現状において対策を取られるのが良いかもしれません。
撤退相談或いは資産保全にご関心のございます企業・個人様につきましては、弊社まで是非お気軽にお問合せ頂けますと幸いです(info@tvpmyanmar.com)。
※ 本ファンドはミャンマー証券取引法施行規則第107条(b)項による50名未満の者への勧誘(私募)としており、証券取引法第35条に基づく目論見書による一般大衆への勧誘を前提としておりません。その為、お問い合わせを頂いたお客様に対して、個別にご案内のメールをさせて頂くように致しております。
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