ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー情勢の最新情報 Vol.24(激増する死傷者数、高まる反中感情)

(ご案内)

※ 本記事は、2021年3月18日(木)ミャンマー時間14時に執筆しています。

※ クーデター発生日よりClubhouseにて音声での情報発信を行っています(@myanshin)。ミャンマーの今を知って頂きたいという「信念」に基づいてお届けしています。本ブログと共にお聴き頂ければ、ミャンマー情勢は概ね把握可能なように努めております

※ 企業向けの情勢分析レポートも別途賜ります。また取材につきましても E-mailにてご連絡頂ければと存じます(info@tvpmyanmar.com) 。

※ 発生日からの時系列、2月1日(月)2月2日(火)2月3日(水)2月4日(木)2月5日(金)2月8日(月)2月9日(火)2月10日(水)2月11日(木)2月12日(金)2月14日(日)2月16日(火)2月17日(水)2月19日(金)2月21日(日)2月22日(月)2月23日(火)2月25日(木)2月28日(日)3月4日(木)3月7日(日)3月10日(水)3月14日(日)の記事も合わせてご覧ください。

弊社(Trust Venture Partners)では混迷を深める現地情勢を受けて、日緬間の送金・現地法人の内部監査対応・休眠化及び休眠時対応・退避/ビザ・その他緊急時対応等、様々なご相談を頂いております。 また、現地の情勢分析を踏まえた今後の方針・シナリオ設計、合弁解消、資産売却、事業撤退手続き等も含め、現地の日本人及びミャンマースタッフにより幅広いご支援が可能です。 ご不明な点等ございましたら是非お気軽にご連絡頂ければと存じます(info@tvpmyanmar.com)。

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(以下、本文)

3月14日の大量虐殺は混迷を深める現地情勢に新たな局面変化をもたらした

同日、国軍は一部地域への戒厳令(Marshal Law)を発動。3月27日の国軍記念日を間近に控える中で焦りが募っている。形振り構わぬ徹底弾圧の構えだ。

また、反国軍側の連邦議会代表委員会(CRPH)も同日、自衛の為の武装を呼びかける声明を公表。不服従運動(CDM)による間接的圧力だけでなく、武力的な反攻も一部視野に入れつつある情勢だ。

一方、中国は同日に起きた中国企業に対する損害を受けて、自国への飛び火を抑えることに躍起となっている。米中対立の軋轢が加速する中で、ミャンマー国軍と一蓮托生とのスタンスは、国際情勢的に持続不能な流れが生じつつあるだろう。

今後の注目は外交プロトコル上の障害を乗り越えて、国際社会がミャンマーの国家統治機関(或いは暫定政権)としてのCRPHを受け入れるか否かにあろう。国連による承認は得られなくとも、主要国の中で部分的な認定をする事例が出てくる可能性は考えられる。ひとたびその流れが生じればドミノ倒しのように国際世論が形成される可能性はあるかもしれない。

国軍にとっての最悪のシナリオは、(1)中国に梯子を外され、(2)CRPHが国際社会の承認を受け、(3)CRPHが少数民族武装勢力(特にカレン民族同盟:KNU/KNLA)を取り込み、新たな”ミャンマー国軍”、つまり正規軍を形成することだろう。その時点で、ミャンマー国軍はもはや”国軍”でなくなり、国際的にも単なる”賊軍”或いは”テロ組織”に成り下がる3月4日の米国‐シンガポール間の防衛大臣会合で「テロ対策(”Counterterrorism”)での協働」という意味合いが後々に明らかとなることがありうるかもしれない。

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<激増する死傷者数、高まる反中感情>

政治犯支援協会(AAPP : Assistance Association for Political Prisoners) によれば、今回のクーデター後の死者数は3月17日時点で208名に到達。特に、3月14日には一日で74名が殺害された。2月1日のクーデター後の累計死者数は3月13日時点では100名に満たなかったことを踏まえれば、ここもとの凄惨さは正に常軌を逸している。また、これらはAAPPが確認(Verified)出来た死者数であり、実際の数は遥かに多いことも示唆されている(likely much higher)。

3月14日の大虐殺では特にヤンゴン北西に位置するラインタヤ群区(Hlaingthaya Township)における被害が甚大であった。過激な表現には些か抵抗はあるが、SNS上で見られる「戦場(Battlefield)」と言う表現にも実際違和感が無いレベルだ。ラインタヤに向かう橋の上では車のタイヤが炎上。国軍の進行を防いでいる。

同時にミャンマー国軍を支援していると見られている中国に対する国民の反感は極限に達しつつある。中国の国営メディアによれば、同14日に中国系の32工場が襲撃の被害を受けたようだ。算出方法は怪しそうではあるが、損害額は37百万米ドルとしている。

これを受けて、3月15日(月)、中国外務省はミャンマー国軍に対して、中国企業と中国人を保護すると共に、犯罪者の処分を要請(”urging Myanmar to take concrete measures to stop all violent activities and punish the perpetrators in accordance with the law to ensure the safety of Chinese employees and enterprises”)。3月17日(水)の中国外務省報道官の発言にも、ミャンマー国軍に対する「より徹底した(”More Vigorous”)」措置を求めることが強調されている。自国への飛び火を何とか抑えようと、国軍への圧力を強めている構図だ。ミャンマー国軍は正に四面楚歌の状況になりつつある。

中国系工場への襲撃により、日系企業も間接的な影響を受けている。

ユニクロブランドで知られるファーストリテイリングは、ヤンゴンの取引先工場のうち2つで被害があったことを公表。同社の取引先縫製工場はミャンマー国内で6つ、うち5つがヤンゴンに立地。生産遅延の影響が指摘されている。

また、中国企業と誤認されたと見られるケースも見られる。ラインタヤ群区にある台湾系の製靴工場では社用車等が破壊。これを受けて台湾外交部は自国企業に対して台湾国旗を掲げることを推奨している。

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<ヤンゴン市内6群区での戒厳令が発動>

3月14日(日)の事態を受けて、国軍側はヤンゴンの一部地域に対する戒厳令(Martial Law)を発動。14日夜にラインタヤ(Hlaing Thar Yar)群区、シュエピタ(Shwe Pyi Tha)群区の2つが、翌15日には更に4つの群区、北ダゴン(North Dagon)群区、南ダゴン(South Dagon)群区、ダゴンセイカン(Dagon Seikkan)群区、北オッカラ(North Okkalappa)群区が対象地域に加わった。計6つの群区はヤンゴン市内の中心地では無く、その周辺域、工場等が多いエリアだ。

国軍側の説明によれば、戒厳令により国家反逆罪(最高刑は死刑)は刑事事件としての裁判にはかけられず、軍法会議 (上訴は不可) で裁かれることとなる。反逆罪等にかかる23項目が列挙されている。デモ抗議者に対する弾圧を徹底し、恐怖感を焼き付ける戦略にブレが無い

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<ネット遮断が本格化>

3月14日のラインタヤ群区における衝突は、国軍にとっての危機感を大きく高めたものと読み取れる。速やかに発動された戒厳令に加え、ミャンマー全土でのネット遮断に踏み切ったこともその焦りをうかがわせる

3月15日(月)からは携帯電話によるインターネット回線の全面遮断が開始。また、18日(木)からは街中のホットスポットに接続するネット回線も遮断された模様だ。文章では説明しづらい為、通信環境について以下の表にまとめる。

原則として外出時のネット接続は不可能となり、鎮圧活動の様子をライブ配信されることを抑制する意図が読み取れる。

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<アウンサンスーチー国家顧問の動向>

アウンサンスーチー国家顧問は2月1日に拘束され、3月1日までの間に計4件の罪状(最大禁固9年)で訴追。 その後3月11日には汚職の疑惑(最大禁固15年)を突き付けられた。3月17日(水)の国軍側の中間発表によれば、財界から計55万ドルが渡ったとする疑惑をかけられており、NLDに近い財団が日本を含む海外組織から受領した寄付金の資金使途にかかる調査も進行中であることも明らかとなった。

アウンサンスーチー国家顧問に対する裁判所における審理(ビデオ会議)は3月1日に開始され、第2回目が15日に開催される予定であったが、ネットの不通により延期。次回の開催は3月24日に予定されている。

また、アウンサンスーチー国家顧問の裁判動向とは直接の関係は無いものの、米国の投資家ジョージソロスのミャンマー財団オープン・ソサイエティー・ミャンマー(OSM : Open Society Myanmar)に対する国軍の調査も進められている。

国軍側の言い分としては、OSMが外国為替管理にかかる承認を得ずして資金をミャンマーに流入、その後1.4百万米ドルをミャンマーチャットに両替し、不服従運動(CDM)資金に充当されたとするもの。

ジョージソロス氏とアウンサンスーチー国家顧問は2016年にニューヨークで面談をしていることでも知られており、両者の関係性は近いものと見られている。国軍側によるNLD粛清の包囲網は明らかに広がってきていると言えるだろう。

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<連邦議会代表委員会(CRPH)による反撃が加速>

3月17日に公表されたCRPHの通達(第14号)は、サプライズとは言えないまでも個人的には重要性の高いものと捉えている。反攻のモメンタムは依然高く推移している。

同通達では、「連邦民主国家の樹立の為に戦闘を続けてきた少数民族武装勢力に対して、これまでの”テロ組織”或いは”違法組織”の指定を取り払う(”removal of the list of terrorist groups or unlawful association of all ethnic armed revolutionary organizations formerly designated as terrorist group or unlawful association, which have been fighting for the establishment of a federal democratic union”)」とするもの。誤解を恐れず言えば“敵の敵は味方”というロジックで、民兵組織を取り込む意図が明確だ。

ここで念のため、これまでCRPHが発出してきた主な通達を簡単におさらいしたい。独断と偏見でその重要性(Top10)毎に以下列挙する。

1.現行憲法の廃止と新憲法の起草方針を明確化(3月5日、CRPHのPolitical Vision) ⇒国軍側の憲法遵守姿勢に真っ向から対立

2.ミャンマー国軍が運営する国家統治評議会(SAC : State Administration Council)を”テロ組織(Terrorist Group)”に指定(3月1日、CRPH通達第10号)  ⇒テロ組織としての認識を国際社会に広める動きが開始

3.市民による自衛は刑法上認められた行為(3月14日、CRPH通達第13号)  ⇒これまでの非暴力の姿勢から変化の兆し

4.少数民族武装勢力(EAOs : Ethnic Armed Organizations)のテロ指定を解除(3月17日、通達第14号)  ⇒敵の敵は味方。連邦軍の創設に向けた第一歩の可能性

5.2月5日付でCRPHを結成(2月8日、CRPH通達第1号)  ⇒国軍による国家統治評議会との対立開始

6.CRPHは国会議員380名によって形成(2月25日、CRPH総会声明)⇒憲法上の上下両院の総数は664名、過半数は333名。

7.9省庁に対する大臣代行職(Acting Union Minister)を指名(3月2日、CRHP通達第11号) ⇒実質的な二重政権化が現実味

8.カレン州出身者を副大統領代行職に任命(3月9日) ⇒カレン民族同盟(KNU/KNLA)取り込みに向けた兆し

9.CRPHの特別代表(Special Representative)としてササ氏(Dr. Sasa)を任命(2月22日、CRPH告示第8号) ⇒国際社会との窓口を指定

10.クーデター後の投資認可を無効化(3月13日、CRPH計画・財務・工業省通達第1号) ⇒国軍による経済運営を真っ向否定

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<その他のアップデート>

(米国が自国民に退避勧告)

米国の国務省はクーデター後の2月14日にミャンマーへの渡航情報(Travel Advisory)を最上限のLevel4に指定。自国民へ「ミャンマーへの渡航は控える(Do Not Travel)」ように要請。これは新たにミャンマーへ渡航する人に対する対応であった。

今般の戒厳令を受けて15日(月)、現地の自国民に対して退避を勧告(Advise to Leave)を通達。現状について「生命を脅かす高い可能性Greater likelihood of life-threatening risks“)」を指摘している。各国の勧告呼びかけのニュアンスは若干の温度差は見られるものの、シンガポール、英国、日本に続き、米国も自国民を避難させる方向に進展してきている。

(日米外務相会談でミャンマーへの対応が協議)

バイデン政権後初となる日米安全保障評議委員会、いわゆる”2+2″が3月16日に開催。同時に日米間の外相会談及び防衛相会談が実施。

茂木外相とブリンケン国務長官(Secretary of State, Antony Blinken)間の外相会談では、ミャンマー情勢について「民間人に対する暴力の即時停止、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む関係者の解放、民主的な政治体制の早期回復をミャンマー国軍に対し引き続き強く求めていく方針 」が確認。

今回の日米会談のメイントピックは中国への対応となり、2+2及び防衛相会談にかかる報道発表ではミャンマー情勢にかかる言及は無い。ただし、中国への圧力強化は間接的にミャンマー情勢に影響を与える可能性があり、今後のクアッド(QUAD)の方針も含めて注視すべきだろう。

※ 日米安全保障協議委員会(2+2)の会談概要はこちら

※ 日米外務相会談の概要はこちら

※ 日米防衛相会談の概要はこちら

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(欧州連合による経済制裁が来週発表)

フランスのル・ドリアン(Le Drian)外務大臣は、3月16日(火)、欧州連合(EU)としてのミャンマーへの制裁を来週にも発表することに言及。3月22日(月)に最終の確認が行われる模様

対象は「ミャンマー国軍の資金源となっている組織(“generating revenue for, or providing financial support to, the Myanmar Armed Forces”)とされていることから、個人的には米国や英国の制裁よりも広範囲の内容となることを予想している。

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