ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー軍事クーデターの最新情報を現地から発信(NLD 対 国軍、或いは 国軍 対 国軍か)

※ 本記事は、2021年2月3日(水)ミャンマー時間11:00に執筆しています。

※ 2月1日より、Clubhouseにて音声による情報発信を開始しています(@myanshin)。

クーデター勃発から3日目となる2月3日(水)のヤンゴンは、あたかもこれまで通りの日常が戻ったかように感じられる。銀行は昨日から通常営業を始め、証券取引所も本日3日より営業を再開。当社も、本日より通常のオフィス勤務に戻っている。

ミャンマー国内では、クーデター発生から72時間以内はNLD支持層が反発を自制することを呼び掛けている模様であり、これまでのところ大きな市民生活の混乱は見られない。ただ、72時間が過ぎる明日以降のデモの発生等には、細心の警戒が必要な情勢だ。

<国連安保理の共同声明は見送り>

2月2日(火)に緊急開催された国連安全保障理事会(UN Security Coucil)では、国際社会が一致した対応を行うことが重要(Council’s unity is crucial)とはされたものの、安保理としての共同声明は出されなかった。

欧米諸国(EU、英国、米国)は、ミャンマー軍事政権に対する圧力を強めるための批難を継続しており、また、国連のグテレス事務総長(UN Secretary-General Antonio Guterres)は、既に今回のクーデターを「国際社会における重大な懸念」(Grave Concern) と表明していた。

一方、中国、ロシア及びASEAN諸国は軍事政権に対する批難に後ろ向きと見られ、両者の溝が埋まらなかった模様である。国連における協議は継続される見通しであるが、例えばミャンマー国内においてデモの鎮圧等に伴う武力行使が生じるなどの一層のテンションが高まる事態が生じない限りは、共同声明の発出には至らない可能性が高いかもしれない。

<軍内部の権力闘争の可能性>

今回のクーデターの発生の背景は、一般には選挙不正をめぐる政権与党NLDと国軍との確執と捉えられている。2020年11月の総選挙におけるNLDの圧勝を受けて、国軍の政治への参加を規定する現行憲法の改正に向けたモメンタムが上がることへの懸念を受けた国軍の反発という理解だ。

ただし、その更なる裏にはクーデター発生の前に記載した通り、国軍内部での次期司令官をめぐる権力闘争がある可能性が考えられる。

65歳の定年を半年後に控えるミンアウンライン国軍司令官は、その定年延長を図る意向を持っていた模様であるが、その同意をNLDから得られなかったとの説もある。現行憲法の342条では、「大統領は、国防治安評議会の提案と承認により、国軍司令官を任命する」とあり、2016年に60歳から65歳に定年延長を行った際に、任命の期限が付されていた可能性があろう。国防治安評議会自体は現在の国軍司令官が実質的に支配しており、そこでの承認を受けていない人物が任命されることは無いが、大統領に拒否権はあるとの規定である。

NLD側は、ミンアウンライン国軍司令官の再任命には消極的で、別の司令官の任命を意図していたのだとすれば、今後、軍内部における再度のクーデターが生じるという二段階の混乱が起きる可能性もゼロでは無いかもしれない。ダブルクーデターとなれば、そのマグニチュードは計り知れない

なお、邪推ではあろうが、今回のクーデター実行について、国軍は国際社会における後ろ盾として予め中国を想定し、事前に伝えていた可能性は十分あるだろう。 中国の王毅国務委員兼外相は、本年1月11~12日にミャンマーを公式訪問しており、アウンサンスーチー国家顧問やウィンミン大統領との会談の他に、帰りがけにミンアウンライン国軍司令官とも面談をしている。国際社会からの孤立を恐れるミャンマー国軍としては、 当該面談においてクーデター実行計画を事前に中国へ通達をしていた可能性はあると考えている。

<ご質問事項への回答(FAQ)>

2月1日より開始したClubhouseにおける情報発信において、数多くのご質問を頂き、日本にいらっしゃる方の関心の所在も把握出来てきました。ありがとうございます。ここでは、簡単にこれまで出てきたご質問に対してお答えしたいと思います。

(為替レートに与える影響は?)

クーデター勃発前の1月29日(金)の為替レートは、1米ドル=1,331チャット、直近の2月2日(火)では、1米ドル=1,337チャットであり、為替市場には今のところほぼ何の影響も及ぼされていない、と見れます。ただ、2月3日朝からチャット安へ振れる動きが見られるため、今後の相場はボラタイルになる可能性があります。

(タイとの貿易・外交関係の見通しは?)

タイとの主な国境は、タイ側メーサイ・ミャンマー側タチレク、またタイ側メーソット・ミャンマー側ミャワディであり、クーデターが発生した2月1日午前には一部の貨物の往来が停止された模様ですが、同日午後には再開されています。暫定軍事政権は、国民生活の安定・ビジネスの振興を継続させる意向と考えられますので、ミャンマーにとって重要なタイとの人・物の往来を大きく阻害させる動きをすることは考えづらいかと思います。

また、タイのプラウィット・ウォンスワン副首相は、今回の事態は、「ミャンマーの内政問題で、タイと関係がない」と表明(バンコク・ポスト)したようであり、タイはミャンマー軍事政権とも適度な距離感を保ち、外交関係をこれまで通り継続すると考えられます。

(ASEAN各国の反応は?)

上記のタイを除く東南アジア各国の反応も概ね「内政問題」と位置付けている点で共通しています。フィリピン・カンボジアは既に「内政問題」と明言しており、また国連安保理においてもASEAN各国は内政不干渉の原則を貫く立場であり、今回の事態を受けてASEAN域内における外交関係の大きな混乱は無いものと見込まれます。

(ロヒンギャ問題と関連性はあるか?)

今回の軍事クーデターは、ロヒンギャ問題とは全く別次元であり直接的な関係や影響は無いものと思われます。今回のクーデターが、NLD 対 国軍の構図なのだとすれば、そのいずれもがロヒンギャに対しては好意的な対応はしていない点で一致しています。したがって、両者の争点になる可能性は低いと見込まれます。ただし、ロヒンギャ問題の解決に向けては、国際社会、隣国バングラデシュ等との平和的な協議が必要であり、そのような話し合いの場を持つことが軍事政権では行いづらい点においてはマイナスの影響はあると考えられます(こちらの記事参照)。

(ミャンマーの事業を撤退すべきか?)

現時点では、事態が流動的であり、現在拘束されているNLD幹部の解放、国際社会の反応、特に欧米による経済制裁の行方、新たに樹立された暫定軍事政権による経済政策等、現状では今後の見通しが立てづらい状況にあります。

このような状況においては、新規の事業開始、投資といったリスクオンの逆張りは如何なものかとは思いますが、尚早に事業の撤退や大幅な縮小を決定するには依然情報が不足し過ぎているかと思います。今後、2,3か月で様々な事態がよりクリアになってくるはずですので、そうしたことを踏まえて意思決定を行われるのが良いように思います。

そもそもミャンマーへビジネス展開されている、或いはされようとしている理由は、ミャンマーの持つポテンシャル(労働力や消費マーケット)にあろうかと思いますが、そうしたものが足元大きく変化したわけではありません。まずは冷静に事態を見つめることが重要かと思います。

(飛行機の運航見通しは?)

当初5月末まで空港を閉鎖するとの発表は、その後すぐに4月末に変更されています。一方、ミャンマー国営航空は、国内線と国際救援便を2月4日から再開すると発表しており、全面的な閉鎖ということでは無い模様です。

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