ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマーの政治情勢が緊迫化(軍事クーデターは経済に壊滅的な影響)

※本記事は、2021年1月30日(土)に執筆しています。

※ミャンマーの政治構造の基本情報については、こちらを先にご参照ください。

ミャンマーの政治情勢が少なくとも民政移管(2011年)以降、最大級の緊迫化を迎えている。依然可能性は高いとは言えないが、軍事クーデターが生じる確率は足もと徐々に高まってきていることは間違いない

仮に何かが起こるとすれば、それはおそらく2月中だろう。事態の不透明性が高いこともあり日本での報道は限定的であるが、英国BBC等の海外メディアは連日事態の行方を発信している。

実際には何も起こらない可能性(少なくとも表面的には)が高いことは間違いが無いため、過度な懸念は不要であるが、ミャンマーに関与する以上は、最悪の事態を常に頭の片隅に置いておくことも重要だろう。

一体、ミャンマーの内部で何が起こっているのか、何故軍事クーデターに繋がり得るのか、また万が一にでもクーデターが生じるとすればそれはどのようなシナリオか、今後の見通しについて迫っていきたい。

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<事態の発生点>

2020年11月に行われた総選挙では、アウンサンスーチー率いる与党の国民民主連盟(NLD)が連邦議会の上下両院で改選議席の83%に当たる396議席を獲得。一方、旧政権で国軍と近い連邦団結発展党(USDP)は33議席( 前回2015年選挙では41議席 )の獲得に留まり大敗を喫した。

今回、ミャンマー国軍(Tatmadaw)は同選挙において、8.6百万人分の不正投票(同一人の複数投票、国民登録証の不所持等)があったと主張している。

※2/1追記 1/31の国軍発表では1050万件に増加

選挙不正自体に関する国軍や野党からの指摘は11月下旬頃からは見られた動きであったが、選挙管理委員会(UEC)が適切な対応をしてこなかったこと(との主張)により、国軍による不満がエスカレートしてきた。 新たに選出された議員による初の国会の開催が迫る中、 事態は緊迫化している。

2015年11月の総選挙時を振り返れば、当時も軍事クーデターの可能性は指摘されていた。NLDが政権を獲ることに対する旧軍政による反発は強かったであろうが、実際には平和裏に政権移行が実現された。ただ、今回の事態が2015年と異なる点としては、第一に、当時はUSDPがUECをコントロールしていたことから、そもそも選挙実施にかかる軋轢が生じ得なかったこと、第二に、 国軍司令官(Commander in Chief)であるミンアウンライン(Min Aung Hlaing)による国軍内での統制が強力に働いていたことが挙げられるかもしれない。

<緊迫化の経緯>

国軍の報道官であるゾーミントゥン准将(Brigadier General Zaw Min Tun)は、1月26日(火)の声明で、不正投票にかかる指摘を行うと共に、「軍が権力を奪還するとは言わない。ただ、それが起こらないとも言わない(We don’t say Tatmadw will take power. We don’t say it won’t)」と、軍事クーデターを否定しない発言をしている。

上の写真では、マスクをしているため表情が読み取りづらい部分はあろうが、前後の映像を見る限り、相当程度の不快感が感じ取られる。個人的にはあながちブラフとも聞こえない印象を持った。

翌27日(水)には、ミンアウンライン国軍総司令官が国軍士官学校(DSA:Defence Services Academy)において、「憲法こそが法の根幹をなし、従うべきもの。憲法が尊重されないのであれば、廃止されるべき(The Constitution is the Mother Law. Therefore, we should follow it. If the Constitution is not respected and followed, it must be abolished)」と、現行憲法を廃止、すなわち実質的に軍事クーデターの可能性を匂わせる発言を行っている。

28日(木)には、現実的な行動として、ヤンゴンにおいて軍事車両の配置がなされた模様であり、また、 首都ネピドーへ入る道路は封鎖されている。

緊迫化する事態を受けて、同28日、国連のグテレス事務総長は、対立は法的枠組みに基づいて解決すべきとの声明を発表。また、翌29日(金)には、ミャンマー駐在の欧米外交団が共同声明で国軍に対する民主主義の順守を求める声明を出している。

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<最高裁判断の行方>

足もとの重要な争点として、 野党(USDP及び野党連合)が最高裁に対して行った3件の申し立てに関する判断に注目が集まる。1月29日(金)に最高裁は審理を行い、受理・不受理の判断を下した模様ではあるが、その結果は2週間後に公表するとされている。もちろん、既にアウンサンスーチー国家顧問、ウィンミン大統領、ミンアウンライン国軍司令官あたりはこの結果を知っている可能性はあるだろう。

1月29日(金)の2週間後は2月12日(金)であるが、同日は祝日(Union day)であるため、一応の目途として2月15日(月)に公になることが想定される。 軍事クーデターが万が一にでも生じる可能性があるとすれば、それはこの公表日と時間的に密接な関係を持つことも考えられる。

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<ミャンマー最高裁の構成>

軍事クーデターに至り得るかを判断する上で、最高裁による判断は極めて重要となってくるだろう。米国のトランプ前大統領による最高裁への不正投票の申し立てと似ているが、ここでもやはり最高裁の判事の構成が重要になってくる。

ミャンマー最高裁(Supreme Court of Myanmar)の長官(Chief Justice)は、現在トゥントゥンウー(Htun Htun Oo)が務めているが、同氏は前政権(USDP政権)時に任命(2011年3月)された人物である。旧軍政時代の最高指導者タンシュエ(Than Shwe)に近い人物としても知られる。

司法権の独立からすれば当然ではあるが、2016年に政権を奪取したNLDが最高裁判事を丸ごと入れ替えることはもちろん出来ない。ミャンマー最高裁判事は70歳定年制であり(憲法301条(a)項)、長官のトゥントゥンウーについて言えば1956年生まれである為、2026年までは長官を継続することが見込まれるわけだ。

最高裁判事は最大11名によって構成(憲法299条(b)項)され、この中にはUSDP政権時代に任命された判事、またNLD政権以降にNLDの指名に基づき新たに加わったメンバーが含まれる。ただ、長官であるトゥントゥンウーによる意向が強く働く可能性が高いことから、不正にかかる事実認定のみならず、同氏の特定の政治思想に影響を受けることもあり得るだろう。若干陰謀論に近い色彩にはなろうが、同氏がタンシュエとの距離が近かった経緯を踏まえれば、タンシュエの意向を踏まえて裏でシナリオが描かれている可能性もゼロでは無いかもしれない。

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<次期国軍司令官の行方>

あくまでも個人的な見解に留まるが、今回の事態の背景には国軍内部における次期司令官をめぐる権力闘争があるとも考えられる。

ミンアウンライン国軍総司令官は1956年7月生まれであり、本来60歳の2016年に引退を迎えるはずではあったが、当時は5年間の延長を行った。65歳の定年を迎えるまで残りの任期は半年程度に迫っており次の司令官選出に向けた内部調整が進んでいる可能性が高い

序列で行けば、国軍総司令官(Commander in Chief of Defense Services)の次は、国軍副総司令官(Deputy Commander in Chief of Defense Services)、第3位が統合幕僚長(Chief of General Staff)である。統合幕僚長は、陸・海・空軍のそれぞれの司令官に対する直接的な指揮権を有する強烈なポジションであり、ミンアウンライン現司令官や旧下院議長トゥラシュエマン(Thura Shwe Mann)も務めた重職だ。年功序列で行けば、副司令官が繰り上がる可能性も考えられるが、世代交代が図られる可能性は高いと考えられる。

ミンアウンラインの国軍士官学校(DSA)卒業年度は19期生であり、2011年当時の国軍高官の中では最も若い年齢の一人であった。現在の副司令官であるソーウィン(Soe Win)はDSA22期であり、年次的に大きな差が無い。

最も有力視されているのは、2016年から統合幕僚長を務めるミャトゥンウー(Mya Tun Oo)大将(General)であり、DSA25期とミンアウンラインの6期下にあたる。順当に行けば、ミャトゥンウー(1961年5月生まれ、現在59歳)が軍を引き継ぐことが目されている。

世代交代が一気に進む場合、DSA30期のモーミントゥン(Moe Myint Tun) も次期司令官の候補としての呼び名が高い。また、近年の国軍のホープともされる チョースワーリン(Kyaw Swar Lin)は49歳・DSA35期生ながら、 2020年5月に少将(Mag-Gen)から中将(Lt-Gen)に昇進し、国軍内での序列6番目(主計総監:Quartermaster General)に就いた実力者である。現在のミャンマー国軍の中将では最少年齢だ。

ただ、チョースワーリンは、2018年までラカイン州でモーミントゥンの補佐をしていたことから、モーミントゥンが司令官となった場合、同氏が副司令官となる可能性が指摘されている

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<今後の予定と想定シナリオ>

目先は、2月1日(月)に開催される下院議会、2月2日(火)に開催される上院議会が無事に進むかどうかを注視したい。

上院についても本来下院と同日の2月1日に開催の予定であったが、コロナのワクチン接種(下院議員は29日、上院議員は30日)の為、一日延期された。この延期にも裏で画策されているような噂がなされているが、おそらくこれについては単純に予防接種の理由であろう。

<想定シナリオ1>

第一のシナリオは、極めて限定的な可能性ではあるが、議会開催日の2月1日(月)に軍事クーデターが起こるという可能性

上下両議会では、議会開催日にそれぞれ議長を選出するため、それを阻止する為に、2月1日の下院議会開催日にクーデターが起こる可能性は排除しきれない。ただ、現実的にはクーデターのような国家の超一大事の前で、議長選出というイベント自体が果たしてどこまで左右するのかは怪しいかもしれない。ただ、上述の軍事車輌の配置等を含めて既にクーデターの準備が相当程度整っているとすれば、可能性は無くは無いだろう。

<想定シナリオ2>

第2のシナリオは、2月15日(月)近辺に、最高裁の申し立て拒否が公表された場合。

この場合、野党系のデモが生じることは考えられるが、その地域・規模は限定的だろう。上記のシナリオ1よりも相対的にクーデター発性の確率は高いとは思うが、直ちに武力行使に至るには大義名分が弱すぎるようにも感じられる。

<想定シナリオ3>

第3のシナリオは、2月15日(月)近辺に、最高裁が申し立て受理の公表をした場合。

選挙不正が立証される、或いは国軍が最高裁に対する影響力を示した場合に起こり得るシナリオで、この場合が最もカオスが生じる可能性は高いだろう。

本シナリオにおいては、おそらくNLD支持層が全土に跨って大規模なデモに発展する可能性がある。

実際問題、軍を動かす為には相当な大義名分が必要だ。過去の軍事クーデターを見ても、大規模デモの発生等による治安維持(デモの鎮圧)を名目とすることが前提とされていると見受けられる。その意味では、軍事クーデターが起こるとすれば、本シナリオである確率が高いのでは無いかと個人的には想定している。

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<憲法廃止というシナリオ>

万が一クーデターが生じた場合、現行憲法が廃止される可能性は相当程度見込まれるだろう。

実際にミャンマーでは過去2度、憲法が廃止された事例がある。一度目は、1962年にネウィン将軍による軍事クーデターにおいて1947年(48年の独立の基盤となる憲法)に制定された憲法が廃止された。また、二度目は、1988年の民主化デモ(8888民主化運動)により、1974年に制定された憲法が廃止されている。

憲法廃止などという事態が生じれば、民主化の動きは大きく後退し、国際世論のミャンマーに対する姿勢は劇的に強まると想定される。

2020年8月末頃より生じたコロナ第二波がようやくおさまりつつある状況の中で、ミャンマー経済に壊滅的な影響を及ぼしかねない火種が燻っている。

関連記事 : ミャンマーの政治構造(2020年総選挙で様子見姿勢の投資家が動き出す。選挙システムをわかりやすく解説) 2019年11月13日

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