ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー総選挙2020 直前予想(NLD政権による単独過半数の維持は可能?元証券マンとしては予想せずにはいられない)

ミャンマーの選挙構造については、以下の記事を先にご覧下さい。
・ミャンマーの政治・選挙システムについては、
こちら
・前回総選挙から見る今回の選挙の見どころについては、
こちら

次の5年を担う政権選択のための総選挙(2020年11月8日)が間近に迫る。

アウンサンスーチー率いる 国民民主連盟(NLD:National League for Democracy) は、参加した過去3回の国政選挙(1990年総選挙・2012年補欠選挙・2015年総選挙)の全てで大勝を果たしてきたが、今回もその勢いに大きな衰えは見られない。単独過半数獲得の可能性は高い情勢だ。

今回、国政では上院の全224のうちの161議席、下院の全議席440のうちの315議席、合わせて476議席が改選議席として争われる。

選挙後の議席数は上下両院で642議席(本来の664議席のうち22議席分は選挙が実施されない)となることから、過半数は322議席となる。

従って476分の322、すなわちNLDが単独で全改選議席の67.6%を獲得出来るか否かが焦点となるわけだ。結論から言えば、私の予想は331議席プラスマイナス10議席で、単独過半数を維持できない確率は10%以下と見ている。

こうした結論に至った背景と内訳を、以下説明していく。

<コロナと移動制限がもたらす選挙への影響>

前回総選挙(2015年11月8日)では、軍政の流れを汲んだ USDP(連邦団結発展党:Union Solidarity and Development Party)からの政権交代への熱狂が国民に幅広く浸透していた。 投票率は80%に上っていた。

あれから5年、民主化への熱狂は冷め、政治への関心は低下。それに加え、足元ではコロナウイルスの感染拡大による移動制限が投票活動へ与える影響に注目が集まっている。

ミャンマー国内の感染者数は一日当たり千名超、検査陽性率は10%程度と高く推移しており(2020年10月31日現在)、国民の不安は根強い状況にある。

ミャンマー選挙管理委員会(UEC : Union Election Commission)の広報官であるミン・ナイン(Myint Naing)は、投票率の低下には至らないとの見通しを公表しており、また10月10日付の通達では60歳以上の有権者の期日前投票(10/29-11/5)の方針を打ち出し、積極的な投票を呼びかけている状況にはある。

しかし現実には、市民団体の調査で「必ず投票に行く」との回答は45%に留まっており、全体としての投票率の低下は避けられないと見られる。

投票率がNLDの獲得議席に与える影響としては、一般に、投票率が高くなればNLDにとって有利低くなれば組織票を持つ野党(特に少数民族政党)に有利な構図にあると思われる。

ただ、今回の予想では、移動制限がもたらす影響はNLDにとってほぼニュートラルとの前提に立っている。

これは、端的に言えば国内の移動が制限されたことで、感染拡大はNLDが元々有利な都市部(或いは7管区)に封じ込められ、NLDが不利な地方部(或いは7州)への波及が防がれてきているからだ。仮に国内移動制限をせず、感染及び投票自粛が地方に及んでいたら、NLDには不利な構図となっただろう

実際、地方では感染数は限定的で、選挙活動には大きな影響を与えておらず、また投票率の大きな低下は避けられる見通しだ。一方、都市部での投票率は大きく減少することが想定されるが、元々NLDへの対抗馬が不在の都市部では大勢に変化は無いと見込まれるわけだ。

<NLD獲得議席数の見通し>

今回、「表向きは」安全上の理由により、22議席分の選挙が実施されないこととなった。上院についてはラカイン州で7議席下院についてはラカイン州の8議席及びシャン州の7議席だ。それら以外にも、各地域のタウンシップにおいては一部地区の選挙が行なわれない。

前回の記事でも記載しているとおり、ラカイン・シャンの両州は、本来少数民族政党の勢力が強く、前回の総選挙でNLDが敗北を期した地域だ。これが、上で敢えて「表向きは」と入れている理由だ。

従って、一部地区の選挙中止はNLDにマイナスの影響が無いどころか、むしろ全体の議席数の減少による過半数ラインの引き下げというプラスの効果をもたらす。 当然、野党(特に少数民族政党)はUECの決定が恣意的だとの批判を強めている。が、方向性が覆ることは無いだろう。

以上のような前提を踏まえながら、ここから先は各区分における獲得議席数の予測に入っていく。「上院・7管区」、「上院・7州」、「下院・7管区」、「下院・7州」の4区分で見ていこう。前回の予想の通り、焦点は下院の7州にあるとの見通しに変更は無い。

<NLDの上院・7管区における獲得予測>

上院・7管区のNLD勝率は6月の予測95%から変えていない。NLDの前回「得票率」(投票率とは異なる)が54.5%にとどまったエーヤワディ管区では若干の減少を見込むが、圧倒的な勝利の構造は変わらないだろう。

<NLDの下院・7管区における獲得予測>

下院・7管区においては、6月の予測90%から若干下方修正し88%を見込む。ここでもNLDの圧倒的勝利は疑いようが無いが、マンダレー・エーヤワディなどが足を引っ張り、勝率は前回選挙比8%近く減少するものと思われる。

<NLDの上院・7州における獲得予測>

6月の予測では、7州を3つのグループ、すなわち①敗退濃厚グループ②踏み留まり期待グループ③どっちいくか不明グループ、に区分し、①はラカイン、シャン、チン、②はカヤーとモン、③はカチンとカインとしていた。

今回の予測では、①をラカイン、シャン、カヤー、モン、②をチン、カチン、③をカインと組み替える。カヤーとモンについては、前回NLD得票率がそれぞれ48.5%、49.4%と高く安定と見ていたものの、足元の状況では苦戦が見込まれ、少数民族政党の躍進が起こる可能性がある。

一方、チンは前回得票率が38.3%と低かったものの、州内部での対抗勢力の構図からNLDの議席確保が続くと見ている。

以上の結果、77のうち31議席、40.3%の勝率を見込む。

<NLDの下院・7州における獲得予測>

最も予測が困難なカテゴリーであるのがこの下院・7州である。

各州の基本的な構図は、先に挙げた上院と大きな相違は無いが、議席数が多いため、ここで大外しすると全体の議席数予測を狂わす。

特に、議席数の多いシャン州では前回獲得議席数の12から微減を予想しているが、そもそも前回はUSDPと シャン民族民主連盟(SNLD : Shan Nationalities League for Democracy) との三つ巴の構図から敗北に繋がった背景からして、対抗勢力の状況に大きく依存される。

前回SNLDは下院で12議席を獲得したが、今回は更に議席を伸ばしてくるものと見込まれる。その勢いがUSDPの現有議席を奪うに留まらず、NLDの議席を侵食してくる可能性もある。

予測としては、全108議席中、38議席、勝率35.2%とする。

以上を総括すると、NLDの獲得議席数は上下両院で331となり、改選議席での勝率は69.5%、また軍籍議員を含めた総議員数642に対して51.6%となり単独過半数の維持が可能との結論に至る。

主な変動要因としては、シャン州の下院での上振れ、及びカチン州の上下両院での下振れ、当たりと見込む。

<その他政党の動向>

さて、個別の州毎の情勢について見ていきたいところだが、マニアックのレベルを通り越すので、ここでは、現状NLD、USDP(前回の記事で解説済み)に次ぐ、第3の勢力ANP(ラカイン州)第4の勢力SNLD(シャン州)について簡単に状況を振り返っていく。

<ANPの動向>

アラカン民族党(ANP:Arakan National Party)は、前回総選挙以前の2013年にRNDP(Rakhine Nationalities Development Party)ALD(Arakan League for Democracy)が統合して誕生した。

2015年総選挙では、ラカイン州での強い支持を受け、上院で10議席、下院で12議席、ラカイン州議会で22議席を獲得し、全土レベルでNLD、USDPに次ぐ第3の勢力を誇るに至った。少数民族内での支持の分散を防ぐ成功例となった。

しかし、その後ANP内部では混乱が続いたことで、今回の総選挙にも影を落としかねない状況にはある。

まず、2017年1月には、ALDの元党首であったエー・ター・アウン(Aye Thar Aung)は、統合相手先のRNDPのメンバーによってANPが牛耳られていることを理由に、離脱を表明してしまった。エー・ター・アウンは再びALD(元サヤ)を結成し、今回の総選挙に望むことになる。

また、その後もANP内部の混乱は収まらず、 2017年11月に は残ったANP(実質的な旧RNDP)の中での内紛により、 RNDPで党首を務めていたエー・マウン(Dr. Aye Maung)が内部の確執を理由に党首を辞任することとなった。

この結果、2013年にANPを結成した立役者であった旧RNDPと旧ALDの両方の党首がANPを離れてしまうという異常事態が生じた。

先に挙げた通り、今回ラカイン州では選挙の実施が限定的で、ANPの獲得議席数はそうでなくとも大幅な減少が避けられない状況にある。そこへALDとの票の食い合いが生じれば、結果的にANPの勢力は激減し、ひいては国政におけるラカイン州のプレゼンスの低下を招くことに繋がるだろう。

<SNLDの動向>

2015年の前回総選挙においてSLND( シャン民族民主戦線 )は、上院で3議席、下院で12議席、また州議会において25議席(シャン州24・カチン州1)を獲得し、現状4番目に大きな政党として位置付けられている

シャン州は前回総選挙でUSDPが唯一勝利(上下両院で18議席)を収めた地域であるが、USDPに再び風が吹く可能性は低いだろう。結果としてSNLDの議席の獲得は膨らむものとみる。

ANP程では無いが、SNLDにおいても内部の事情に若干の懸念は残る。

党首のクン・トゥン・ウー(Khun Htun Oo)は今年9月、突如として党首を辞任する意向を表明した。同氏は、SNLDが結成された1988年から30年以上にわたり党首を務めてきている人物で、SNLDの顔と言っても良い。

既に77歳と高齢であり、辞任は健康上の理由とされているが総選挙を直前に控えた何故この時期なのか理解に苦しむところだ。2018年頃より辞任の意向は表明しており、、また、正式な辞任は選挙後となる模様ではあるが、内部では後継者が定まっておらず、今回の選挙運動においても主導権を争う内部対立が起きていないとも限らない。内紛さえ無ければ、議席数の上積み自体は問題無いだろう。

<少数民族政党の連合>

最後に、気になる少数民族政党間の連携の状況を簡単に触れて締めくくる。仮に、NLDが単独過半数獲得に失敗した場合、俄然としてこの部分が重要になってくる可能性があるからだ。

現状ある連合としては、2015年に結成されたUNA(United Nationalities Alliance)であり、SNLDを中心として、以下の13の少数民族政党によって形成されている。

<UNAの現在の加盟政党(13政党)>

  • Shan Nationalities League for Democracy(SNLD)
  • Arakan League for Democracy(ALD)
  • Zomi Congress for Democracy(ZCD)
  • Shan State Kokang Democratic Party
  • Kayan National Party
  • Kachin National Congress
  • Shan-ni Solidarity Party
  • Danu National Democracy Party
  • Khumi National Party
  • Mro National Democracy Party
  • Daingnet National Development Party

<加盟を協議中の3つの政党>

  • Democratic Party for a New Society
  • Union National Democracy Party
  • Karen National Party

<補足:州議会の状況>

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関連記事 : ミャンマーの政治構造(2020年総選挙で様子見姿勢の投資家が動き出す。選挙システムをわかりやすく解説) 2019年11月13日

関連記事 : 2020年ミャンマー総選挙の見通し(NLD政権の勝算の行方を大胆予想) 2020年6月3日

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