ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー情勢の最新情報 Vol.22(CRPHは副大統領代行を任命。一層混迷を極める国家統治構造)

※ 本記事は、2021年3月10日(水)ミャンマー時間14時に執筆しています。

※ クーデター発生日よりClubhouseにて音声での情報発信を行っています(@myanshin)。ミャンマーの今を知って頂きたいという「信念」に基づいてお届けしています。

※ 企業向けに情勢分析レポートも別途承ります(info@tvpmyanmar.com)。現地ビジネス展開にかかる方針・シナリオ設計、合弁解消、資産売却、事業撤退手続き等幅広くご支援が可能です。

※ 発生日からの時系列、2月1日(月)2月2日(火)2月3日(水)2月4日(木)2月5日(金)2月8日(月)2月9日(火)2月10日(水)2月11日(木)2月12日(金)2月14日(日)2月16日(火)2月17日(水)2月19日(金)2月21日(日)2月22日(月)2月23日(火)2月25日(木)2月28日(日)3月4日(木)3月7日(日)の記事も合わせてご覧ください。

ほけんの時間

全土に跨る数百万人規模のデモが生じた2月22日(Five Twos Uprising)及び28日(2月最終日)後は、デモ隊側の戦略に一部転換が見られる

2月26日より国軍側の武力行使が過激化してきたことから、非武装・非暴力のデモ隊側の死傷者は増加。3月3日には一日にして38名(国連発表) の死者が生じたこともあり、危険を伴うデモ活動から、間接的に圧力を強める不服従運動(CDM : Civil Disobedience Movement)を強化する流れが生じているようだ。現に、2月後半に見られたヤンゴン市内各所での大規模デモ活動は足元鳴りを潜めている。

全土に亘るCDMは国軍側としても想定外であったと見られ、市民による圧力強化は一定の効果が認められるだろう。ヤンゴンの都心部を含めて、国軍側は深夜に街中で発砲を繰り返すことで、市民に対して恐怖心を焼き付ける手立てに出ていることも、国軍側の焦燥感を示すものと捉えられるかもしれない。。

今後の国軍側の出方を見通す上で、3月27日の国軍記念日(Armed Forces Day)は重要なマイルストーンとなり得る。

国軍記念日とは、1945年3月27日に当時日本の植民地であったミャンマーにおいて、ビルマ国民軍(Burma National Army)が日本の占領軍に対して一斉蜂起したことを記念するもの。例年、国軍による記念式典が開催されているが、昨年2020年はコロナの為中止。今年の開催(第76回)について、クーデター前から国軍はコロナ対策を行った上で開催することを公表していた(1月18日 : Irrawaddy報道)

国軍側としては記念式典開催に向けて、市民に対する徹底した弾圧を一層強化する可能性が見込まれ、事態の鎮静化に向けた糸口は全く見当たらない情勢だ。

インプラント

<市民による中国への圧力強化の動き>

3月9日に出された日本大使館による声明(国軍が任命したワナマウンルウィン外相を「外相」と表現したこと)に対する反発は一部見られるが、抵抗を強める市民の矛先は特に中国に対して激しく向かっていると言えるだろう。

SNS上では、市民側によって「違法な軍政への支援を直ちに止めなければ、中国へ繋がるパイプラインを含むあらゆる中国の事業が崩壊を招く(If you do not stop support the unofficial military junta within next 3 days, Myanmar-based Chinese businesses must be collapsed soon, including Kyaukpyu sea port, gas pipeline projects every business across the country”」”との主張が見られる。

また、仮にパイプラインの爆破が起こってもそれはミャンマー国内の 「内政(Internal Affair)」 問題と強烈な皮肉を食らわせている。これまで中国は今般のクーデターに対して、”内政(Internal Affair)”問題と強調し、静観する立場を示してきたわけだ。

中国としても自国がターゲットとされつつある状況を座視しているわけでは無い。 中国外務省傘下にある対外安全保障局(Department of External Security Affiairs)のバイティアン(Bai Tian)局長は、「ミャンマー内務省及び外務省に対してガスパイプラインの安全を確保するよう要請」したとされ、その書簡が漏洩している。中国の危機感が強く伝わってくる内容だ。

ミャンマーの北西ラカイン州に位置するチャオピュー(Kyaukphyu)と中国を結ぶパイプラインは中国国営のCNPC(China National Petroleum Corporation)によって開発され、全長は800kmに及ぶ。パイプラインは並行して2本(年間22百万トン輸送可能な“原油”パイプライン 及び 年間120億㎥輸送可能な“ガス”パイプライン)あり、ベンガル湾沿いのチャオピュー港から、マグウェー管区、マンダレー管区、シャン州を通じて中国に繋がっている。中国の一帯一路政策(BRI : Belt and Road Initiative)に直接的に影響し、いわゆる「マラッカ・ジレンマ(”Malacca Dilemma”)」を抱える中国としては、地政学上、或いは安全保障上、重要な意味合いがある。

市民側は中国の国連における立ち位置についても注視している。

3月5日に開催された国連安保理(UNSC : United Nations Security Coucil)を受けて、英国は議長声明の採択に向けた動きを継続。原案には、ミャンマー軍政を”非難する”との文言が入れられているものの、ロシア・中国がこれに応じるかは不透明だ。デモ隊側は、国連の場において中国が軍政支持を打ち出せば、ミャンマーでの中国ビジネスに甚大な影響があるだろう(”If China continues to block strong UNSC action, there will be more and more anti-China activities in Myanmar, which will have serious consequences for the gas pipeline, the BRI and other Chinese projects in Myanmar)と警告を出している。

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<徹底的な言論統制が開始>

ミャンマー情報省(MOI : Ministry of Information)は、3月8日(月)付で5つのメディア(Mizzima、DVB、Khit Thit Media、Myanmar Now、7Day )のライセンスをはく奪したことを公表した。

2月21日には英字新聞Myanmar Timesが3か月休刊することが公表経営陣による検閲に反発して、記者の退職を招いたことから活動停止に追い込まれた。今後、現地情報を配信するメディアが更に細ることが強く懸念される。

国軍による統制は単なるライセンス剥奪に留まらない

3月8日(月)の午後、今回ライセンスを剥奪されたメディアの一つであるミャンマーナウ(Myanmar Now)のヤンゴン事務所が国軍側により襲撃。PCやデータサーバー等が押収された。

また翌3月9日(火)の午後にはKamayut Media社及びMizzima社に相次いで突入。Kamayut Mediaについては、共同創業者であるハンターニェイン(Han Thar Nyein)と編集長のナタンマウン(Nathan Maung)の2名が逮捕された。

先に挙げた中国外務省からの書簡では、ミャンマー国軍に対してメディアへの統制を強めることも求めている(”China hopes that the military regime will put pressure on the Myanmar media, to reduce its skepticism of China. Bai said the regime should rein in the media to only write about China in a positive way“)模様。今回のメディア弾圧が、中国の要請を受けてのものかは不明であるが、そのタイミングからして一定の関連性は疑われるだろう。

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<「実質的二重政権」は加速>

昨年11月の総選挙で当選した議員によって構成される連邦議会代表委員会(CRPH : Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw)は、これまで大臣代行職の任命等を行ってきたが、3月9日、副大統領代行として新たにマウンウィンカインタン(Mahn Win Khaing Than)を任命。同氏はカイン州出身で、前政権では上院議長を務めていた。

「二重政権」といった表現はどのメディアにも見当たらないが、本ブログにおいてクーデター直後より「二重政権」と表しているのは分かり易さを意識した表現に過ぎない。憲法上の根拠が不足していることは明らかだが、双方が共にその妥当性を主張して国家の権力が実質的に二分されている状況から判断し、便宜的に用いている。

憲法上の根拠について深堀りすればCRPHの任命には一定の妥当性は認められるだろう。

国軍が無効とした昨年11月の総選挙では、国民民主連盟(NLD)は上院総数224名中138名、また下院総数440名中258名の議席を獲得。つまり、NLDは「合法的に」上下両院において単独過半数を得ていることは事実だろう。

現行憲法上、両議会の開始は「過半数の出席」、またはその出席が伴わず延期された場合は「3分の1の議員の出席」により可能だ(憲法128条(a)項 : The first day session of the Pyithu Hluttaw shall be valid if more than half of the total number of the Hluttaw representatives, who have the right to attend the session, are present. The session, if invalid, shall be adjourned. 同条(b)項 : The sessions that are adjourned due to invalidity in accord with the Sub-Section (a) as well as the valid sessions that are extended will be valid if at least one-third of the Hluttaw representatives are present.※上院の規定は155条 参照)。

また、ミャンマーの憲法上、大統領の指名は3名の候補者から連邦議会の選出によることが規定されており、任命された大統領以外は副大統領職に収まる。 従って、NLDは上下両院において大統領候補(2名)を選べる政治的妥当性は持っていると考えることが自然だろう。

(ミャンマーの大統領選出のプロセス)

さて、CRPHは副大統領代行職として何故敢えて少数民族出身者を選出したのだろうか。或いは、カイン州(カレン族)出身者である必要性があったのか。

3月5日にCRPHが出した声明と読み合わせて判断していくことが重要と「個人的には」考えている。

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