ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー進出・投資のポイントを本気で解説(第4回:パートナー選定ミスは致命的。ミャンマーでの合弁会社設立の要点)

ミャンマーへの進出・投資を検討する際のポイントを徹底解説。

第4回となる今回は、ミャンマー市場におけるパートナー選定のポイントについて取り上げる。ミャンマーに限らず、特に新興国への進出に際しては仮に100%子会社や支店設立であったとしても、現地事情に精通したパートナーを持つことの意義は大きい。結婚以上に離婚が大変なのと同様に、特に合弁会社での進出を図る場合に パートナー選定を誤ると、後々現地での事業展開上致命的な影響を受けかねない。

一方で、日系企業の中には深い精査も無くパートナー選定を安易に決定する事例が見られ、結果的にミャンマー事業からの撤退や大幅な事業縮小に至らざるを得ない事態が散見される。そうした事例を一つでも減らすために、今回はミャンマーでのパートナー選定の重要性と、選定に際しての留意点を解説していきたい。

<パートナー選定ミスを生み出す背景>

統計上は明らかでは無いが、2018-19年頃より日系企業による現地での合弁解消は増加してきているとの感触を持っている。日系企業の進出ラッシュが2013-14年頃であったことからすると、概ね5年程で合弁事業が終焉を迎えている事例が多いと言えるかもしれない。

合弁解消に至るまでの経路は各社各様であろうが、中にはそもそも選んではいけないパートナーであったケースが見られる。

あくまでも「参考例」ではあるが、以下のような相手の場合には留意した方が良いかもしれない(もちろん、以下に当てはまることのみを持って選択肢から外すべきでは無い)。

1. 日本帰りで日本語が流暢

誤解頂きたく無いのは、日本語を話すミャンマー人が怪しいという事では決してない。これはミャンマー人側の問題というよりもむしろ日本人側の問題なのである。すなわち、ミャンマー語のみならず英語でのビジネス経験が薄い日系企業の中には、日本語を話せるミャンマー人に対して特別な親近感を持つ場合が多い。仮に相手が通訳者であったとしても、ビジネスパートナーとして迎え入れようとするのは、日本語を話すことに極端(過度)な価値を見出しているからだろう。仮に、日本で新規事業を行う場合に単に言語能力が高い人と合弁会社を組む会社が果たしてあるだろうか。

2. 政治や軍部との近さを匂わせる

これは典型的なミャンマー「あるある」だが、その中でも常套文句と言えるのは「大臣の息子が友達」と言ってくるケース。残念ながらこれが出てきたら、多少身構えた方が良いかもしれない。後述するが、仮にそうしたコネクションが事実であったとしても、近年のミャンマービジネスの現場において果たして本当に機能するか否かは極めて怪しい。権力者との間をつなぐ単なるブローカー的な存在である可能性も十分考えられる。

3. 土地や利権を持っていることを強調する

特に財閥系の企業、或いはそれに関連する個人に多いが、聞いてもいないのに自分が保有する土地や利権を一方的に話してくるケースだ。「○○地域に○エーカーの土地を持っていてデベロッパーを探している」という話を、私自身もミャンマー経験において何千回と聞いてきたように思う。もちろん個別の話の中には魅力的な案件も含まれているかもしれない。ただ、確率論として、そうした話をしてくる人は、自らが進んで事業をしようとする意思が弱く、他人(外国人)任せにして美味しいとこ取りをしようと考えている割合が高そうだ。

4. 会って二回目で「You are my best friend」となる

ミャンマー進出を検討中のビジネス視察者は、通常パートナー候補となる企業を数多く回る。そうした中でミャンマー企業側からの熱烈な歓迎を受けるケースも少なく無い。食事に誘われたり、是非工場を見に来て欲しい、といった具合だ。当然、温かく迎えて頂けること自体は感謝すべきことではあるが、中には異常なほど馴れ馴れしいケースも見られる。最初の会合で話が少しでも盛り上がれば、次回会った際の最初の一言は、「よくぞ来てくれた我が親友」となっている。人は良いのかもしれないが、要は「軽い」のだ。ビジネスパートナーとしては不向きなケースが多いと言えそうだ。時間の問題で綻びが出る。

以上は、半分笑い話のように思われるかもしれないが、ミャンマーで現実に多発している事例である。「そんな相手に引っかかるわけが無い」と思う人ほど気を付けた方が良いかもしれない

<騙さ”れ”たのか、騙さ”せ”たのか>

事実関係は確認できないことが多いが、ミャンマー事業がうまくいかなかったケースの中で、日本人から聞こえてくるのは「ミャンマー人に騙された」という声だ。

特に多いのは、土地の名義借りの場合である。ミャンマーでは不動産を外国人が保有することは出来ず(一部コンドミニアム法で解禁してはいるが)、合弁パートナーとなるミャンマー人に資金を渡し、名目上の土地のオーナーになってもらうことが多用されている(その後、パートナーとの間で形式上のリース契約を巻くことで地代の値上がり等のリスクを排除する)。そもそもこのような名義借り自体が違法であり、従って法律上の担保は一切無い。実質的な資金の出し手が誰であろうとも、土地の所有者はそのミャンマー人その人となることは明確である。揉めたとしても、裁判で争う以前の問題で100%勝ち目がない

このようなケースにおいて、ミャンマー人が後々自分の権利を主張し土地を乗っ取ることが実際生じている。日本人からすると、「裏切られた」、「騙された」となるのもよくわかる。

ただ、このような話を耳にするたびに思うのは、果たしてそのミャンマー人は初めから「騙すつもり」であったのか否かという点だ。あくまでも私見ではあるが、 明らかな詐欺師という場合を除いて、初めから騙そうとしていたミャンマー人はむしろ稀なケースであったのではないかと思われる。

ここで是非、逆の立場になって考えて頂きたい。自分の名前で登記された土地が有り、主張すれば100%その土地は自分のものになる。その金額は自分が一生働いても稼げないような金額である。さて、このような状況に置かれた時、仮に日本人であったとしても、どの程度の割合の人が義理を尽くすだろうか?

当然ながら、人を騙すことが正当化されてはならない。ただ、「騙された」という一方的な側面だけでなく、「騙させてしまう」環境に追いやった責任は全く問われなくて良いのだろうかとも思う。

<合弁パートナーを見極める>

さて、少々情緒的な話が長くなってしまったが、ここからは少しビジネス色を強めた解説に移っていく。

まず、合弁事業の組成については、通常二つの形態があるのはご承知の通りだ。

一つはパートナー会社との間で新たな会社を設立する形態、もう一つはパートナー企業自体に出資を行い合弁会社とする形態だ。

ミャンマーでは、現会社法(2018年8月から施行)以前は、既存のミャンマー企業(内資100%企業)に対する出資(後者のケース)は運用上認められていなかったことから、前者の新設会社を設ける形態が原則であった。

新会社法施行後も、既存のミャンマー会社に対する出資は、資産査定(Due Diligence)や株価算定(Valuation)上の課題が多く、また過年度のレガシーリスクの観点から、依然として後者の形態はほとんど見受けられない

そこで、合弁会社を新設する(前者の)ケースに関して、大局的な留意点として以下の二つ挙げておきたい。

一点目はパートナー側の合弁事業に対するコミットメントだ。

合弁会社を新設するということは、ミャンマー側パートナーは既存の法人をそのままの形で維持する。そこには当然日本側のコントロールは一切及ばない。通常、新設会社の事業内容は既存法人が行っていない事業領域とし、コンフリクト(利益相反や競業)が生じないように「契約上は」定める。ただ実際には、ミャンマー側パートナーが既存法人の事業の延長線上で合弁事業に関連した領域に進出することは十分起こり得るし、かつ自分が100%所有する思い入れのある既存法人の事業に対して注力しがちになる傾向がある。ミャンマー側パートナー(合弁相手先のオーナー)の合弁事業へのコミットメントを如何に引き出していくかが重要だろう。下手をすると、何も関与しないのに後々文句だけは言ってくるという関係になりかねない。

もう一点は、パートナー企業に対する信用情報の確保だ

ミャンマーでは総じて企業の透明性は低く、企業情報を網羅的に把握することは困難を極める。当社では企業の信用調査サービスを提供しており、これまで多くの日系企業に利用頂いてきたが、それでも財務に関する情報は特に入手が難しいのが実態だ。

新設会社に対しては当然ながら査定(DD)を行う術も無いが、問題は合弁相手先法人(既存法人或いはオーナー個人)の信用情報だ。ミャンマー側株主からすれば、何故合弁事業と関係の無い既存法人の財務情報を出さないといけないのかとの抵抗があることが多い。ただ、「はい、そうですか」と容易に引き下がってはならない

通常、新設会社とミャンマー側既存法人は何らかの契約を交わすことが多いと言える。例えば、既存法人が持っている土地の上に新設会社が建物を構築する際に土地の賃貸契約を結ぶことや、既存法人が新設会社にとっての販売会社(ディストリビューター)と位置付けられるケース、或いは既存法人が持っているライセンスを新設会社が活用するケースなどだ。新設会社が金銭を「払う側」であれば多少の妥協の余地はあろうが、「受取側」である場合は当然与信リスクが生じ、日本側株主としても備える必要がある。また、そのような事情が仮に一切無かったとしても、例えば将来的に合弁会社が増資をする場合にミャンマー側株主が応じてこれるだけの資金余力があるか否かなども気になるところだろう。ここでは書きづらいが、実際にはミャンマーではこれ以外にも合弁相手先法人に端を発したトラブルが様々な形で生じ得る。

従って、結論としては合弁相手先法人の企業情報・財務数値は一定程度出してもらえるように粘る、ということになる。実際には「依頼はしたが出せないと言われた」というケースが多い。ただ、これから一緒に合弁事業を行おうとする相手に決算書も見せられないのは本質的に不自然なわけで、時間をかけて信頼関係を築いていくことが必要だろう。

<合弁交渉に臨む際のポイント>

合弁契約関連(Shareholders Agreement或いはShare Subscription/Purchase Agreement)の実務に関しては論点が極めて多岐に亘るため別の機会に預けるとして、ここでは合弁交渉における心構えとして以下の4点を取り上げる。

1.意思決定者が交渉の場に臨む

以前、中東のエネルギー関連会社(売上規模数千億円)をミャンマー企業に紹介した際に、初回面談に社長が自らしかも単独で乗り込んできたのに衝撃を受けたことがある。秘書の同行すら無い。資料も全て事前に読み込んで、その場で意思決定に臨んでいた。グローバル企業ですらこうであるのに、日系の中小企業の中には真逆の例も見られる。担当者が下慣らしの為に数回訪問し、その後役員が来て話を詰め、社長が来るのはサイニングセレモニーの時ぐらいというケースが多い。スピード感が重要な海外事業において一体どちらが優位に立てるかは明らかだろう。

ちなみに、日系企業が海外でNATO(No Action Talk Only)、或いは4L(Look, Listen, Learn, Leave)と呼ばれているのをご存じだろうか。実際にミャンマー企業からも「日本の企業はミーティングのたびに多くの人が訪問に来るが、特定の人以外は何も発言しない。一体あの人たちは何のために来ているのか」という皮肉にも似た発言を聞くことがある。交渉にあたる当事者は、一定の権限を付与された上で臨むという姿勢が少なくとも必要だろう。

2.期待値をコントロールする

当社は現地に根差したアドバイザリーファームとして、ミャンマー企業のクライアントの割合が高い。その為、日系企業との合弁解消の案件においてミャンマー企業側のアドバイザーを務めるケースもある。そのようなケースでミャンマー側企業からは、日系パートナーに対する不満が「よくぞ、そこまで言うか」という程出ることがある。要は、期待していたのに裏切られた、という主旨だ。

ただ、車の事故で過失割合が0:100ということが珍しいのと同様で、日本企業側にも相手に対する多くの不満が発生している場合がほとんどだ。話を突き詰めていくと、要は根本的なところで双方の期待値の掛け違いが生じていることに気付く。

通常、合弁交渉の中では多少のハッタリ(風呂敷を広げること)は方便とは言える。その方便を双方が真に受けて、相手に対する過剰な期待を前提に話が進むことは、大きな禍根を残すことに繋がりかねない。ミャンマー側パートナーが日本側に何を期待しているのかを初期段階で明確にしておき、自社が出来る最低限のラインのコミットメントに留めておくことが賢明だろう

3.コミュニケーション方法を確立する

先に挙げた初期段階における期待値コントロールに仮に失敗したとしても、合弁事業開始後の日常のコミュニケーションにより挽回を図ることは可能だ。合弁契約上、通常取締役会は月次、或いは四半期で行うことを定めるが、この取締役会を形式的なものにするか、或いは重要な意思疎通の場に出来るかが明暗を分けるかもしれない。双方が互いのビジネスプラクティスの違いを学ぶ良い機会とすることが重要だ。

何かしらのきっかけで一度コミュニケーションが薄くなると、双方が相手の考え方を把握しづらくなり、そのことが互いの不信に拍車をかけ、意思疎通の頻度が更に下がる。この悪循環の結果、修復不能なレベルの疑心暗鬼に至る。

日本企業にとっては、現場に派遣された駐在員が本社の意向を咀嚼して伝えることが出来ると共に、一定の権限移譲を受けた上で、パートナー側の取締役と議論・合意が出来る体制を築く必要があるだろう。

4.コスト負担の透明化を図る

先に挙げたミャンマー側の不満の源泉の一つが「コストに対する意識」であることは多い。特に日本人駐在員のコスト(人件費のみならず、住居、車、出張費等)については、通常合弁会社が全て負担すると現地のP/L構造が壊れてしまう為、合弁会社と日本の本社が負担割合を決める場合が多い。ミャンマー側株主に、合弁会社の負担として具体的にどの程度の金額になるかのイメージを事前に理解してもらうことが重要だ。

また、駐在員コストのみならず、例えばオフィスの内装や仕入れコスト等などにおいても、双方のコスト意識がぶつかるケースは多い。ミャンマー側株主としては、「単に日本側が自分たちの基準を押し付けてコスト増を招いている」という認識を持ちやすい。何故、高品質なものが必要なのかについて丁寧な説明を行っていくことが必要だろう。

<パートナーに対して何を求めるか>

先にミャンマー側株主の期待値をコントロールするという点に言及したが、日系企業側も相手側に期待することを明確にしておいた方が良い。この点が曖昧だと冒頭に挙げた「誤ったパートナー選定」に流れてしまうリスクが高まる。

そこで、最後にミャンマーでパートナー選定をする際に相手側に期待する典型的な項目として以下5つを取り上げて終わりたい。

1.政治力(行政や軍部への影響力)

2011年以前の軍事政権下においては、政治・軍部とのネットワークがビジネスに大きく影響したが、2020年現在、そのような神通力は既に機能しなくなっていると言って良い。現政権(NLD政権)は特にリベラルな政党であり、公平性を強く意識する。従って、多くの場合、政治力への過度な期待はしない方が賢明だ。

2.合弁会社の経営管理力

現地の事は現地の人に任せる、というのは何とも聞こえが良い。だが、実態としてミャンマー現地の企業或いは経営者の多くは、日系企業が求める組織運営能力は持っていない。計画の策定、財務数値管理、人事管理、社内ルールや業務マニュアルの作成に至るまで、経営管理が出来るローカル人材を得ることは極めて困難だ。この点についても、ミャンマー側株主に対する過度な期待は禁物だろう。

3.オーナー・経営者の将来性

日系企業からのマイノリティ出資の場合の選択肢としては、単にミャンマーパートナーの将来性に期待するという選択肢もあり得るかもしれない。海外経験を持つ若手のミャンマー経営者の中には、自立心の強い優れた経営者も見られる。このような場合については日本の細かな基準や要求を押し付けず、信頼して任せるというスタンスに立つことが重要だ。

4.土地・リース権・ライセンス

先に述べたように、ミャンマーでは外国人の土地保有は認められていない為、不動産開発の場合はミャンマーパートナー側が所有する土地のリース権を現物出資して合弁会社を組成する場合が多い。また、ライセンスがミャンマー内資企業のみに許されているケース、或いはライセンスの追加発行が見通せないケースには、既存のミャンマー法人のライセンスを活用する為にパートナーを選定するという選択肢もある。これ自体は間違ったことでは無いが、土地やライセンスの価値が往々にして過大に評価され、結果として合弁会社の財務リターンが合わないケースが多いのでその点については留意しておきたい。

5.販売ネットワーク・店舗開発力

以上に挙げた4つの期待以上に、本質的に外資系企業にとって重要なパートナーへの役割は、現地ネットワークにあるだろう。この点は外資にとっては一朝一夕にはなし得ない部分だからだ。販売ネットワーク、現地の調達ルート、或いは事業拠点を拡大する為の場所の選定等においてローカルの強みが発揮されるケースは多い。合弁パートナーがそうしたネットワークを果たして有効に持っているかを事前に見極めていくことが重要だろう。

以上のことに加え、言わずもがなではあるが、合弁事業の開始にあたってはミャンマー人の国民性を理解することが重要だ。日本の本社部門の人にとっては、どうしても現場のミャンマー人の考えがイメージしづらいだろう。だが、現地駐在員が板挟みになることが無いように理解しようとする努力を怠ってはならない。双方の株主が互いの不足する部分を補い合おうとする不断の努力があれば、合弁事業が大きく間違うことは決して無いはずだ。

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