ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマーの金利事情に激変(コロナ対応で政策金利を3度の連続利下げ。ミャンマー経済へ与える影響は?)

2020年4月27日、ミャンマー中央銀行(CBM:Central Bank of Myanmar)は、新型コロナ感染拡大に伴う対応として、今年3度めの利下げを行った。合計の利下げ幅は3%となる。

ミャンマーの政策金利は、2012年に12%から10%へ引き下げられて以来、約8年に亘って固定されてきた。ミャンマー経済界では、調達金利の軽減のために、中銀の政策金利引き下げを要望する意見がこれまでも幾度となく生じてきたが、CBMは頑として動かなかった。それが今回矢継ぎ早に三度に亘って引き下げを実行したことは衝撃的だ。

【今年の政策金利引き下げ状況】

従前10%であった政策金利は以下のとおり段階的に切り下げられ、5月1日以降、7.0%となる。引き下げ幅が徐々に大きくなっていることは、経済悪化への危機感の表れとして見ることができるだろう。

3月12日 : 0.5%の引き下げ → 政策金利9.5%へ

3月24日 : 1.0%の追加利下げ → 政策金利8.5%へ

4月27日 : 1.5%の追加利下げ → 政策金利7.0%へ

【預金金利及び貸出金利への影響】

ミャンマーの銀行の預金金利は、CBMの政策金利から▲2%以上とされている。

従前の政策金利が10%であった時代は預金金利は8%以上となり、8%を下回る金利は認められない。逆に8%を上回る金利は自由であり、定期預金を9.5%程度まで付利する銀行も中にはあった。

これが今般の引き下げによって、預金金利の下限は5%に変更になったわけだ。

一方、貸出金利(無担保融資)は、CBMの政策金利から+3%以内とされている。

長らく続いた政策金利10%の時代は、貸出金利は年利13%以内であり、これを上回る貸出金利は認められなかった。上限を示しているだけなので、仮に12%の貸出金利も認められてはいたが、実質的には上限13%に張り付く運用が続いてきた。

これが今般の引き下げにより、貸出金利の上限が10%に変更となった。

なお、上記の貸出金利は、不動産等の担保がついた場合の金利であり、無担保の場合は従前3%が上乗せされていた。今回の3回の利下げ時にも、2回目までは同様に3%が上乗せされる形を踏襲していたが(2回目の利下げ時点で、有担保が11.5%、無担保が14.5%)、3回目の利下げ時には無担保金利を据え置くという処置を行った。このため、2020年5月1日以降の無担保金利は、有担保の10%に4.5%を上乗せした14.5%となる。

金利引き下げにより、既存の借り入れ分については企業の負担が軽減されることは間違いないだろう。但し、企業による新規の借り入れが増えるかと言えば、銀行側のリスクを取り巻く環境からして、極めて限定的になるのではないかと思われる。

なお、銀行にとっては今般の利下げによっても、スプレッド幅(預金と貸出の金利差)は依然として5%が維持されている。そのため、収益性そのものは変わらないように見受けれられるかもしれないが、金利収益のトップラインが23%減少(100円貸した場合、13円の収益が10円の収益になる)する一方、調達コストが37.5%減少(100円預金を受けた場合、8円のコストが5円の支出になる)するわけであり、銀行経営にとっても無視できない影響はあるだろう。

【為替や国債金利に与える影響】

ミャンマーチャットは、2018年9月に最安値となる1米ドル当たり1,600チャットをつけた後、徐々に上昇を始め、直近(2020年5月1日現在)では、1米ドル1,400チャット程度で推移している。民政移管(2011年)以降、チャット高が継続したことは今回が初のケースだ。

ミャンマーの財政収支は赤字であり、中銀ファイナンスにより紙幣の新規発行が行われている。これが恒常的なインフレの一因とも考えられる。 過去5年ほどの推移を見れば、インフレ率とチャットの減価率は概ね似通ってきた中で、8%の銀行金利はチャットを保有する理由を与え、ある種マーケットに適合していたと見ることも出来る。

そのような状態から、預金金利が5%に引き下げられれば、理論的にはチャットの売り圧力に繋がり(金利を産まないゴールドを保有していた方がインフレに勝てる)、相当なチャット安を引き起こすはずである。が、足元のところそれは起こっていない。

国債について言えば、現在、2年もの(クーポン8.75%)、3年もの(クーポン9.0%)、5年もの(クーポン9.5%)が発行されている。直近のオークションでは、5年物の国債が実質利回り10%弱で引き続き落札されていることから、政策金利の引き下げは今のところ国債市場には影響を与えていない

これは奇妙なことであり、銀行からすれば、書類審査等の手間や回収にかかる負担等がある企業向け貸付が10%を上限とされている中、リスクフリーの国債で同様に10%近くで運用が出来てしまうことを示している。合理的には、今後国債金利が切り下がっていくことが想定されるが、金融マーケットが成熟していないミャンマーは摩訶不思議な現象が少なく無いことを物語っている。

【銀行に対する規制強化を3年延期】

今回のコロナ騒動の中で、金利の引き下げ以上に銀行にとって影響のある話が生じた。それは、中央銀行が求めていた銀行への規制強化の延期だ。

CBMは、IMFの指導に基づき2017年に以下の4つの規制を発出し、銀行の健全化を進めてきた。

  1. 自己資本規制比率規制(Capital Adequacy Regulation) : Notification No. (16/2017)
  2. 資産分類及び引当規制(Asset Classification and Provisioning Regulations) : Notification No. (17/2017)
  3. ラージエクスポージャールール( Large Exposures Regulation) : Notification No. (18/2017)
  4. 流動性比率規制(Liquidity Ratio Requirement Regulation) : Notification No. (19/2017)

この中では、規制への適合期限として2020年8月末が想定されていた。

特に、従来よりミャンマーのローカル銀行において横行してきた当座貸し越し(Overdraft)をローンに切り替えることのインパクトは大きく、このことにより、ミャンマー企業の資金繰りが急激に悪化することが懸念されていた。

2020年4月、CBMは上記の規制の適合期限を3年間延長し、2023年8月末日までとした。

健全性に疑義のあるローカル銀行にとっては、延命措置が図られたわけであり、目下の金融危機への懸念は先送りされたと見て良いかもしれない。

関連記事 : ミャンマーの銀行預金・貸出金利が引き下げへ(ミャンマー中央銀行は市中金利を0.5%引き下げることを決定) 2020年3月20日投稿

関連記事 :  ミャンマーの金利事情(ミャンマー中央銀行による無担保貸出し金利の設定) 2019年2月3日

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