ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー情勢の最新情報 Vol.20(二重政権が現実味)

※ 本記事は、2021年3月4日(木)ミャンマー時間11時半に執筆しています。

※ クーデター発生日よりClubhouseにて音声での情報発信を行っています(@myanshin)。ネット回線遮断時はご容赦下さい。ミャンマーの今を知って頂きたいという「信念」に基づいてお届けしています。

※ 企業向けに情勢分析レポートも別途承ります(info@tvpmyanmar.com)。現地ビジネス展開にかかる方針・シナリオ設計、合弁解消、資産売却、事業撤退手続き等幅広くご支援が可能です。

※ 発生日からの時系列、2月1日(月)2月2日(火)2月3日(水)2月4日(木)2月5日(金)2月8日(月)2月9日(火)2月10日(水)2月11日(木)2月12日(金)2月14日(日)2月16日(火)2月17日(水)2月19日(金)2月21日(日)2月22日(月)2月23日(火)2月25日(木)2月28日(日)の記事も合わせてご覧ください。

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少なくとも18名の死者(国連発表)を出した2月28日(日)の惨劇から3日後の3月3日(水)、一日にして少なくとも28名(3/5追記:国連報道では38名)の方が惨殺された。ヤンゴンの北オッカラッ(North Okkalapa)は我々現地に住む日本人にとっても生活圏内と言えるが、当該地域だけで少なくとも15名の死者が出ている。SNS上の情報を見る限り実際の死者はこれらの数より遥かに多そうだ。

国軍及び警察隊による残虐性は加速度を増している。 一切の情けも人の心も見られない。上からの指示が明らかに変わっているのだろう。日に日に増える死傷者とSNS上で流れる目を覆いたくなる情景に決して慣れを感じてはならないと感じる。ヤンゴン市内各所では道路を封鎖するバリケードが散見。多くの人が知っている平穏なヤンゴンの光景はもはや見る影もない

治安部隊による逮捕者数も日々増加している。 政治犯支援協会(AAPP : Assistance Association for Political Prisoners) によれば、クーデター後の逮捕者数( 3月2日現在)は1,294名に達し、依然988名が拘留されている(306名は解放)。2月1日から2月20日までの20日間の逮捕者数が569名であった一方、その後の10日間で700名以上増加しており、明らかに加速していると言えるだろう。

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<アウンサンスーチー国家顧問に対する裁判が開始>

2月1日のクーデター勃発時に拘束されたアウンサンスーチー国家顧問は、その後2月3日に一つ目の罪状、9台の「無線機の違法輸入(Export and Import Law第8条 )」の罪で逮捕(最大で禁固3年)された。

その後、2月15日迄であった拘留期間は17日まで延長され、16日の段階で二つ目の罪状、コロナ対応を怠ったとする「自然災害管理法違反(Natural Disaster Management Law第25条)」の罪で追訴(最大で禁固3年)。

3月1日(月)に開始された裁判所における審理(オンライン開催)においては、更に2件の容疑が追訴された。1つ目は、主にNLD議員によって構成される連邦議会代表委員会(CRPH)による声明が社会を混乱 (”public tranquility”)させたとして刑法(Penal Code)505条(b)違反(最大で禁固1年)。 2つ目は、 無線機を無許可で「使用した」として電気通信法(Telecommunications Law )違反(最大で禁固1年)。 何とも形振り構わぬ言いがかりだ。

これによって、アウンサンスーチー国家顧問に対する罪状は計4件に積み上がり、最大で禁固9年(3年+3年+2年+1年)となった。 次回の審理は3月15日に予定されているが、国軍側は更なる罪状の積み上げに躍起となっていることが読み取れる。

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<実質的な二重政権化>

昨年11月の総選挙で当選した議員298名によって 独自の「就任宣誓(Parliamentary Oaths)」(2月5日)がなされた際に指摘していた二重政権がその後現実味を帯びてきた。

主にNLD議員によって構成された「議会」は連邦議会代表委員会(CRPH : Committee Representing Pyidangsu Hluttaw)を結成2月9日にはアウンサンスーチー氏の国家顧問職の再任命を行い、また3月1日には国軍が結成した国家統治評議会(SAC : State Administration Council)を「テロ組織(Terrorist Group)」と糾弾する声明を出した。

17名の全メンバーに逮捕状が突きつけられる中、国際社会の後ろ盾を元にCRPHによる反撃の狼煙が上がり始めたようだ。3月2日(火)、CRPHはついに独自の閣僚メンバーの選出に踏み切った。8つの省庁に対して、兼務を合わせて4名が任命。一国において、SAC側の大臣とCRPH側の大臣が共存する状態、すわなち二重政権化が生じ始めたわけだ。  

3月2日に行われたASEAN外相会議では、以前からの流れによりSACが指名したワナマウンルウィン(Wunna Maung Lwin)外相が出席した。また、同日開催されたASEAN域内の経済会合には同じくSAC側のアウンナインウー(Aung Naing Oo)投資・対外経済関係大臣が出席

CRPHによる8省庁の閣僚指名が3月2日に発出された背景には、これら会議への出席者の正当性を揺るがす目的があるとも捉えられるだろう。

今後、米国・欧州・英国・日本、或いは中国、ASEANがミャンマーのカウンターパートとしてどちらの大臣と協議をするかによって各国の立場が鮮明に映し出されることになるかもしれない。

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<警察当局に反旗の声>

市民による不服従運動(CDM : Civil Disobedience Movement)は、金融機関等の民間部門、或いは官公庁等の公的部門に広がってきたものの、軍の直轄組織における目立った動きはこれまで見られなかった。しかし、足元変化の兆しが見られる。

まず警察の内部構造について簡単に触れる。ミャンマーの警察庁は内務省(Ministory of Home Affairs)の傘下にあり、9万3千人で組織。現在(クーデター後)の警察庁長官(Chief of Police)は、内務省副大臣であるタンライン(Than Hlaing)中将(Lt-General)が務めている警察庁本部(Police Headquarter)の下には、州・管区警察局(Office of the Commander of the State and Divisional Police Force)、地区警察局(Office of the Commander of the District Police Force)、群区警察局(Office of the Commander of the Township Police Force)、警察署(Police Station)と言った5段階の指揮系統が形成。また、本部には16の特別局(Special Department)が置かれている。

今回、特別局の一つである特別諜報室(Special Intelligence Department、通称「Special Branch」)の少佐(Major)であるティンミントゥン(Tin Min Tun)が2月26日付で辞表を提示したことを自ら明らかにした。同氏は、Facebook上の発信で「同僚に対しても自分が正しいと思う行動をとってもらいたい(“I also want to tell my fellow officers to do what you believe is right”)と残している。 

また、2月28日にはマンダレー管区アウンメェーターゾー群区の第5警察署のトゥントゥンウィン(Tun Tun Win)所長が、3月2日には同じくマンダレーのチャンエイターザンタウンシップの第3署長であるチョーチョーウー(Kyaw Kyaw Oo)所長がそれぞれ不服従運動(CDM : Civil Disobedience Movement)に参加したことが明らかになっている。それぞれが決死の覚悟で独裁政治への反攻を示しており、国軍・警察当局における内部の綻びが出てくる予兆となりうるかもしれない。

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<ヤンゴンで第77歩兵部隊が出動>

治安部隊による対応激化を受けて、ヤンゴン市内では第77歩兵部隊の目撃事例が出ている。また、マンダレーでは第99歩兵部隊の出動がSNS上で広まっている。

まず、先にミャンマー国軍の形成について簡単に触れておく。ミャンマー国軍は、27の部隊(MOC : Military Operations Commands)12の軽歩兵部隊(LID : Light Infantry Division)によって構成(MOCは21~27と見られるが現時点の正確な部隊数は不明)。部隊及び軽歩兵部隊は共に、それぞれ10の大隊(Battalions)が存在するため、27の部隊の中には270の大隊、12の歩兵部隊の中には120の大隊があるわけだ。

歩兵部隊(LID)は司令官の指示のもと時々の軍事作戦上重要な場所への移動を行う機動部隊。通常は、国境付近等における少数民族武装勢力との戦闘に従事しているが、過去1988年民主化運動、2007年サフラン革命、2017年ロヒンギャ対応等においてもLIDが治安部隊として派遣されている。

今回、派兵されたと見られる第77歩兵部隊は、ヤンゴンの北に位置するバゴーに本拠を置き、主にシャン州中央領域における作戦行動に従事してきた(なお、55部隊は南シャン、66部隊は北シャン)。 同部隊は2007年のサフラン革命時においてもデモの鎮圧活動に従事しており、特にその残虐性が指摘されている。

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<その他のアップデート事項>

(ASEAN外相会議)

インドネシアを中心に調整され実現されたASEAN外相による非公式会合(IAMM : Informal ASEAN Ministerial Meeting)が3月2日開催

 ※ IAMMの議長声明の全文はこちら

予測されていた通り、ASEAN各国の温度感の違いからミャンマー国軍に対する批難めいた協調は合意に至らなかった。議長声明では、現状に対する懸念を表明すると共に「全ての当事者に暴力活動を控え、建設的な対話等を通じた平和的解決(”We expressed our concern on the situation in Myanmar and called on all parties to refrain from instigating further violence, and for all sides to exercise utmost restraint as well as flexibility. We also called on all parties concerned to seek a peaceful solution, through constructive dialogue, and practical reconciliation in the interests of the people and their livelihood. In this regard, we expressed ASEAN’s readiness to assist Myanmar in a positive, peaceful and constructive manner”)」を求めるとの議長声明に留まった。

(少数民族武装勢力に対する停戦申し入れ期間が延長)

2月1日のクーデター発生についてその可能性を事前に指摘していた背景の一つに、1月28日付で国軍総司令官オフィスより少数民族武装勢力に対して一方的な停戦申し入れが出されていたことがあった。国軍による停戦申し入れは2020年5月にも3か月の期間で発出されていたが、当時はコロナ感染拡大を抑制する目的もあったであろう。それに対して1月28日の時点では差し当たった理由が見つからず、その為、クーデター勃発の予兆とも見ていたわけだ。すなわち、国境警備にあたっている部隊を移動させる必要性を踏まえてのことと考えられた。

2月26日、国軍は一方的な停戦期間を3月31日まで延長すると発表。停戦の申し入れの背景が、デモ鎮圧に向けた歩兵部隊の投入によるものだとすれば、国軍側としても引く意思が無いことを示すものと読み取れるかもしれない。

(銀行の現金引き出し規制)

多くの企業が給与支払い日としていた2月26日(金)は、銀行のオペレーションが追い付かず支払いが出来ない企業が続出。週明けの3月1日以降も引き続き銀行が不服従運動(CDM)によって休業しており、給与を受け取れていない労働者は生活の糧にも困窮している事態に発展している。

また、現役の労働者のみならず、公務員年金の支払いにおいても混乱が広がっている。国営のミャンマー経済銀行(MEB : Myanma Economic Bank)も民間金融機関と同様にCDMによって行員の作業が追い付かず支払いに支障が生じている模様だ。

取り付け騒ぎを懸念する国軍は、銀行での現金引き出し額に上限を設定。ATMでの引き出し額は1日当たり50万Kyatsとこれまでの半分に制限銀行での引き出しも個人は1週間200万Kyats、企業は2,000万Kyatsの上限を設けた

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<情報発信について>

クーデター発生直後から1か月超、時に自らの仕事を脇に置いて、また様々な意見に晒されながらも、ブログ(文章)・クラブハウス(音声)等での情報発信を当然ながら一銭も受領することなく続けてきた。現地にいる日本人として、少しでも多くの方に「今起こっていることを考えてもらいたい、知ってもらいたい、関心を持ってもらいたい」との信念に基づくものだ。この点は今後も変わらない為、何か私に出来ることがあれば一切の遠慮なく申し付け頂きたい。

私の方は微力な活動ではあるが、おかげさまで多くの方との新しいご縁を頂き、また逆に情報を提供して頂く機会が増えたことに心より感謝している

情報発信を継続したいとは思うが、一方で自らの本来の職務・役割を果たしていくこともまた重要と考えている。ここもと本ブログでの更新頻度は若干下降気味だが、アップデートする事項が減っているわけでも、事態が鎮静化しているわけでも決してなく、単に私自身の時間的・精神的余裕が不足しているに過ぎないことを念のため申し述べておきたい。

いつまでこの地に留まれるかさえ不透明な情勢ではあるが、ヤンゴンの地を心より愛している為、許される限りはここに残りたい。

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