ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー情勢の最新情報 Vol.12(軍政時代で焼き付いた恐怖感を知ることが議論の出発点)

※ 本記事は、2021年2月16(火)ミャンマー時間11時半に執筆しています。

※ クーデター発生日より、毎晩Clubhouseにて音声での情報発信を行っています(@myanshin)。ネット回線遮断時はご容赦下さい。ミャンマーの今を知って頂きたいという「信念」に基づいてお届けしています。

※ 企業向けに情勢分析レポートも別途承ります(info@tvpmyanmar.com)。現地ビジネス展開にかかる方針・シナリオ設計、合弁解消、資産売却、事業撤退手続き等幅広くご支援が可能です。

※ 発生日からの時系列、2月1日(月)2月2日(火)2月3日(水)2月4日(木)2月5日(金)2月8日(月)2月9日(火)2月10日(水)2月11日(木)2月12日(金)2月14日(日)の記事も合わせてご覧ください。

ライザップイングリッシュ

クーデター発生後16日目を迎えるが、国軍と民衆との対立の構図は一向にその解決の糸口が見つからない

民主主義の奪還、またアウンサンスーチー国家顧問の解放を求める「デモの勢い」は表面上はピークアウトしたかにも見られる。建国の父であるアウンサン将軍の生誕日 2月13日(土)には数十万人規模に膨れ上がったが、翌14日(日)には大幅にスケールダウン、更に15日(月)には市内でのデモ活動は疎らになった印象を受ける。

一方で、国民の内面にある軍政に対する怒りの炎が消えつつあるわけでは無い。CDM(Civil Disobedience Movement: 不服従運動)は、医療従事者から始まり、金融機関を含めた幅広い民間部門に波及。パブリックセクターにおいても、税務署や港湾、また国営の鉄道会社であるMyanmar Railways(MR)等にも広がっており、市民生活に対する影響は看過出来ないレベルにまで達しつつある。

軍関連ビジネスにかかる不買運動も更に勢いを増しつつあるかに見える。現地の大手小売店からは多くの軍関連商品が撤去されている。

また、軍政に対して財政的な圧力をかけようとする国民の反発は、徴税機能すら麻痺させつつある。個人所得税(PIT : Personal Income Tax)の支払いを従業員側が拒否し、企業側としての義務である源泉徴収に支障が出ているケースも目立つ。また、商業税(CT : Commercial Tax。※ミャンマーでは原則5%)を消費者が拒否する中で、小売店側が徴収を諦めるケースも出てきているようだ。

財政の逼迫の末に軍政が取り得る行動はおそらく中銀ファイナンスの拡大だろう。コロナ後の経済対応プラン(CERP : Covid-19 Economic Relief Plan)でも財政収支の赤字拡大に備えて国債(T-Bonds)発行の減額、短期証券(T-Bills)発行の増額をしている。T-Billsを大量に発行し、ミャンマー中銀(CBM : Central Bank of Myanmar)による引き受けがなされることで通貨Kyatsの減価が起こり、インフレやチャット安を引き起こすだろう。結果として、消費財を含む多くの物資を輸入に頼るミャンマーとしては、国民生活の一層の困窮を加速させかねない

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<アウンサンスーチー国家顧問の拘留期限が延長>

2月1日のクーデター勃発時に拘束されたアウンサンスーチー国家顧問は、その後2月3日に無線機の違法輸入(Export and Import Law)の疑いで逮捕された。当初15日間の拘留期間(2月15日まで)とされていたが、昨日になって2日間の延長、すなわち17日までの期限と変更された。明日の段階で、(1)無線機違法輸入で起訴(最大で禁固3年)、(2)国軍が進めている強制捜査による余罪を含めた形で起訴、(3)更なる拘留期間の延長、(4)解放、の4つのうちのいずれかとなるだろう。現状では(2)が想定されている可能性が高そうだ。万が一(4)が起こり得るとすれば、それは軍側に何かしらの意図があるものと想定され、率直に喜べる状況とはならないことが見込まれる。

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<インターネット遮断と中国によるネット制限システムの導入の可能性>

2月14日からは深夜1時から翌朝9時までのインターネット回線の全面遮断が行われている。昨夜も遮断は行われており、今後当面は同様の措置が継続されることが見込まれている。

深夜のネット遮断は何とも不可解だ。これまで日中の時間帯において、主にデモ活動等の集会を抑制させる目的で用いられてきたネット遮断とは位置付けが異なるものと思われる。可能性として、(1)深夜の時間帯にデモ活動家の一斉逮捕等をする前兆、(2)ネット制限システムの導入作業、といった可能性が考えられる。

(2)については、中国のファイヤーウォール技術を活用するという話が広く伝わっている。2月9日には中国の昆明から5便のフライトがヤンゴンに到着しIT技術者が搭乗していたとの情報があった。 余談だが、当該指摘に対して中国側は「シーフードの輸入」をしていたと説明しているが、このような時期に海鮮料理を緊急で楽しみたいという需要があるとは思われず、この説明はミャンマー国民を何とも愚弄しているかのように捉えられる。

深夜のネット遮断が始まる直前の2月14日(日)にも、更に昆明発の3機の飛行機がヤンゴンに着陸していたことが確認されており、現在進めているサイバーセキュリティ法(Cyber Security Law)の施行との関連性が強く疑われる状況であろう。

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<現地ビジネス界への影響>

現地ビジネス界では、経済活動を持続させる必要性と国民による反発(CDM)という状況において経営者が板挟みになっている状態が広がっている。

現地メディアのIrrawaddyの報道によれば、クーデター後、マックスミャンマーグループ(Max Myanmar)会長のゾーゾー(Zaw Zaw)氏、エデングループ(Eden)会長のチッカイン(Chit Khaing)氏、MBCCD(Mandalay Business Capital City Development)会長のマウンウェイク(Maung Weik)氏の少なくとも三名については、国軍の尋問が行われた模様だ。同尋問では国軍への協力や経済活動の持続、或いはNLDへの非協力等が言及された可能性が疑われる。

三名の共通点としては過去の軍政時代においては国軍との関係が見られ、その為米国による経済制裁の対象になっていた時期がある。また、国民民主連盟(NLD)政権後は、NLDに近い支援基金キンチー財団(Daw Khin Kyi Foundation)への寄付を行うなど、NLDとの距離を縮めていたことが挙げられている(Irrawaddy紙)。

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<少数民族政党の動向>

今回のクーデターを受けた少数民族側の動きにも注目が必要だろう。

ラカイン州の統一政党とも言えるアラカン民族党(ANP : Arakan National Party)の副会長(Vice Chair)であるエイヌーセイン(Aye Nu Sein)が国家統治評議会(SAC : State Administration Council)のメンバーとなり、ANPは国軍側との連携の色彩が強まっている。また、2月12日の恩赦により、ANPの元党首であったエーマウン(Dr. Aye Maung)が釈放されていることも興味深い。

同党の中では反国軍側の層も一定程度いるとみられ、その結果ANPメンバーの中には党を離脱するケースが生じている。

一方、7州の中で人口・経済力・面積等の面で最大の規模を有すシャン州は、反国軍の意思で概ね固まっている状況と言える。

既にシャン州統一理事会(CSSU : Committee for Shan State Unity)が組織され、シャン州内でこれまで対立関係にあった二つの武装勢力(Restration Council of Shan StateとShan State Progress Party)が共同で参画。また、政党としても同州を代表する2つの政党(Shan National League for DemocracyとShan Nationalities Democratic Party)が含まれている。

ミャンマー国内では、1948年の独立後から続く少数民族との内戦が未だ継続しており、今回のクーデターを巡っても少数民族側の対応がどのように変わるかに注意が必要だろう。

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