ミャンマー新会社法がついに承認(Myanmar Companies Act)
2017年12月6日、前月の23日に国会を通過した新会社法(Myanmar Companies Act)に大統領が署名したことで、同法の成立が確定した。
旧法はイギリス統治時代の1914年から一世紀以上にわたり実質的な改正を経ずに運用されてきており、近年その弊害が指摘されてきていた。
特に、旧法では、1株でも外国人が保有した企業を外国企業(Foreign Company)として定義し別段の取り扱いを行ってきたことが、外国投資を実質的に阻害してきた。
また、既存のミャンマー企業に対しては外国人が出資(ミャンマー企業が外国企業に転換)することは原則出来なかった。外資系企業の進出に際しては新たに合弁会社(JV)を設立し、そのJVに既存ミャンマー企業が現物出資等を行う運用がなされてきた。
本改正に伴い、幅広い業種の企業に対して外国資本の参加が認められることによる。今後の経済発展に向けた大きな礎となることが期待される。
一方、新法施行により直ちに既存ミャンマー企業に対する投資が加速するかと言えば現実的な制約も多い。
最大の制約要因は既存ミャンマー企業の内部体制、特に会計整備が未成熟であり、外国人或いは外国企業が投資する為の「前提」が整備されていないことにある。
ミャンマー企業の多くは複数帳簿を有しており会計に対する信頼性が極めて低く、このことは現地の会計人材の不足、また監査する立場の公認会計士や監査法人が十分な経験・能力を有していないことが背景にある。
また資本構造や利益相反に対する概念が浸透しておらず、当面は外部の資産査定(デューデリジェンス)に耐えうる企業は限定的になるものと考えられる。
また、ヤンゴン証券取引所に上場する企業に対する外国人投資も認められる方向にあるものの、現地証券会社における外国人口座の開設手続き、外国人投資が35%を超えない為の実務上の制度設計等が依然議論されており、実際の購入の開始は今後しばらくは時間を要すものと推察される。
新法については、上記に加え以下のような改正も注目したい。
<定款>
旧法では基本定款(MOA : Memorandum of Association)と付属定款(AOA : Article of Associate)の2種類を作成する必要があったものの、新法ではConstitutionに一本化。また、事業目的の記載が不要となる。旧法では外国会社の事業目的について設立時の許認可の対象となっており、会社設立を認めないことで実質的な外資規制の役割を果たしてきたが、本改正により不透明な運用が排除される。
<取締役の人数と常勤取締役>
旧法では取締役の人数要件として2名以上(非公開会社:Private Company)とされてきたが、新法では1名で可。但し、旧法には無かった取締役の居住要件が追加され、最低1名の取締役はミャンマー国内に年間183日は滞在している必要が生じている。
<株式>
旧法に規定されていた授権資本制度及び額面株式制度が廃止。またこれまで是非が不透明であった権利内容の異なる種類株式(優先配当株式、無議決権株式等)の発行が明文化された。これにより、投資家による柔軟な投資スキームを構築していくことが可能となる。
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