ミャンマー初の信用調査機関の設立(ミャンマー企業の信用情報の共有により銀行の貸出金利の柔軟化や円滑化が期待)
2018年5月18日、ミャンマー中央銀行(CBM : Central Bank of Myanmar)はミャンマーで初となる信用調査機関(Credit Bureau)の設立を認可した。
認可を受けた会社は、Myanmar Credit Bureau Limitedであり、ミャンマー銀行協会(Myanmar Bank Association)とシンガポールのAsian Credit Bureau Holdingsとの合弁企業として設立されている。
同社は、今後、顧客企業等にかかる膨大な情報の収集を一手に管理し、銀行及びノンバンク(NBFI:Non-Bank Financial Institution)等の金融機関に対する信用情報の提供を担うことになる。
<ミャンマーの銀行による預貸利率>
CBMは、国内の全ての銀行に対して、預金金利の下限として8%を設定している。
近年では定期預金について8.5%近い金利を支払う銀行も一部出ているが、通常の普通預金については8%が基本となっている。これは銀行にとっての調達金利に相当する。
一方、銀行による貸出しについては上限金利を13%と定めており、多くの銀行が一律13%の金利を設定している。
従前は、貸し出しに伴う手数料として更に追加の費用を請求する慣習もあり、実際には調達金利が13%を超えるケースも散見されたが、CBMは企業の負担を軽減させるべく、現状ではこのような運用は禁じられている。
従って、銀行にすれば適切な債権管理がなされていれば、預貸により4%から5%の利ザヤ(スプレッド)を得ることが出来る。
規模や間接コストの重さによっても異なるが、一般に、ミャンマーの銀行では預貸比率が60から70%に達していれば、概ね銀行としての利益が確保される状態と言われている。
<事業活動における資金調達の方法>
上記の銀行による貸出しは、あくまでも土地等の担保を前提とした貸付けであり、銀行としては企業の財務諸表が未整備で与信活動が出来ない中、現実的には担保が無い状態での貸し付けは行っていない。
ミャンマーの企業にとっては、13%の利率での借り入れは極めて魅力的である。
現在の日本の感覚で言えば、銀行からの調達で13%というのは高いように感じられようが、インフレ率が高いミャンマーでは最も低利な調達と言える。
一方、2011年以降、小口金融としてのマイクロファイナンス(MFIs: Micro Finance Institutions)がミャンマーでは急速に普及し始めている。
既にミャンマー全土に200近いMFIsが存在している。
規制上MFIsは貸し出しにかかる金利として月額2.5%(年率30%)とされており、実際この上限金利での運用が概ねなされている。
MFIsには、ハイヤーパーチェス(割賦販売)も許されており、一部のMFIsは農村での事業資金貸付などでは無く、都心部でのコンシューマーファイナンスに注力している企業もある。この場合でも、金利としては30%が適用されている。
MFIsは企業にとっての資金調達に直接的に関わるわけでは無いものの、担保が無い場合の貸付け金利としては、この30%が一つのベンチマークとして機能している側面もある(一方、付き合いのある個人間の貸付けや、闇金融も多く存在しており、年率で60%から70%での貸し付けが行われることも決して珍しくない)
従って、企業からすれば、担保が有れば13%、無ければ30%というある種の慣行・観念が形成されており、13から30の間は真空地帯になっていると言っても過言では無いだろう。
今回の信用調査機関はこのような状況を改善するための大きな一歩となり得る。企業の信用力に基づいた資金供給が実現されることに繋が得るからだ。
ミャンマータイムズの報道(2018年5月25日付)によれば、信用調査機関が信用情報を収集し金融機関に提供するまでには5年程度の時間を要するとの見通しも示されているが、早期に起業家に回る資金の確保に向けた整備がなされることが期待される。
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