ミャンマーの企業分類(国有企業・軍関連企業・財閥系企業・新興企業・外資系企業)
ミャンマーの今後の経済発展プロセスを占う上で、よく聞かれるのが中国やベトナムとの比較である。
社会主義国である中国・ベトナムの経済発展プロセスでは、主に国有企業の民営化、特に株式市場を通じた上場を経て、徐々に民間主導の経済構造を作り上げてきた。
一方、ミャンマーでは特に90年代の経済開放を通じて、国有資産の多くは政商(軍政との距離感が近かった民間人。いわゆるクローニー)への払い下げが行われた。この結果、民間主導の経済構造が既に確立された状態になっており、この点において他の社会主義経済からの移行とは異なるプロセスと考えてよい。
上記の政商については、特別に与えられた利権を元に事業拡大を図り、その多くは財閥を形成した。これら財閥のミャンマー経済における存在感は今もなお色濃く残っている。
上記の国有企業や財閥も含めて、ミャンマー企業を見渡す上で、個々の企業がどのようなカテゴリーに分類されるのかを把握しておくことは極めて重要だろう。以下は、これまで数多くの現地企業との面談を通じて当方が取りまとめた企業分類となる。
<企業分類>
企業分類 | 分類説明 | 企業組織の実情 | 例 | ||
国有企業 |
政府内部局として存在。多くは株式会社化(Corporatization) されていないのが実情 |
政府組織と一体であり、職員は公務員としての位置付け |
Myanmar Railways, Myanmar Economic Bank |
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国軍関連企業 | 国軍収益及び退役軍人へのベネフィット提供を目的に組織された企業群 |
経営陣は主に軍出身者。外資とのJVについては経営関与は限定的(Minority保有が原則)
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MEHL, MEC, Myawaddy Bank |
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財閥 | Crony系 | 旧政権寄り | 軍政との関わりが強く、今後の存続が危ぶまれるグループ | オーナー一極集中の傾向が強い |
Zaykabar Group, A1 Group |
現政権寄り | 軍政との関わりは強かったものの、政権移行には柔軟に対応し、現政権とも良好な関係を構築 | オーナー一極集中であったが、組織体制整備を徐々に意識 |
Max Myanmar, Eden Group |
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非Crony系 | 政治とは距離を置き、事業付加価値及び外資との提携を重視 | ミャンマー国内企業群の中では最も権限委譲の意識が高い。印象的には華僑系が多い |
FMI, CDSG |
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非財閥系 | 特定事業領域において、高いシェアを維持 | 組織体制整備の意識は高くは無いが、一部企業は外資との提携をきっかけに意識が高まりつつある |
Citymart, Loi Hein |
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新興Public Company | UMFCCI傘下の協会等から派生して組織されているPublic Companyが中心 | 協会・株主等からの独立性確保を徐々に意識 |
MAPCO, MTSH |
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Startup | 海外から帰国してきたミャンマー人を中心とした起業家が中心 | 企業規模が小さく、組織体制整備への意識は低い |
Jobnet, Chate Sat, Oway |
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外資若しくはJV | 各業種における外資規制の動向が今後の各社の影響力を左右 | 本社スタンダードをミャンマーの実情にカスタマイズ |
Telenor, Myanmar Brewery, HAGL |
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Source : TVP Japan作成 |
上記のように、ミャンマーの企業構造を理解する為には、国有企業、軍関連企業、財閥系、非財閥系、外資系、と大きく5つに分類して考えることが出来る。このうち現段階で最も経済活動へのインパクトが大きいのは財閥系であり、ミャンマーには中堅規模も含めて概ね15-20程度の財閥が存在する。当該財閥系も軍事政権と近かった政商と言われる企業群と軍・政治と距離を置いてきた企業群に分かれる。
以下は、代表的な8つの財閥と、当方で用いている業種(セクター)分類をマッピングしたものである。
これら財閥は概ね全業種の半分以上の領域において事業活動を行っていることが見て取れるかと思う。
<各財閥の事業領域>
Htoo Group | Asia World | Eden |
Max Myan- mar |
Shwe Taung | KMA |
Kanb- awza |
IGE | |
Construction | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ |
Real Estate Development | ○ | ○ | ○ | |||||
Manufacturing | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
TMT (IT, Telecom, Media, etc) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
Healthcare (Hospital, Medicine, etc) |
○ | ○ | ○ | |||||
Retail | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
Infrastructure | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
Transportation (Airline, logistics, etc) |
○ | ○ | ○ | ◎ | ||||
Food and Beverage | ○ | |||||||
Finance (Bank, Securities, Insurance) |
○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
Trading | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Energy | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ |
Agriculture | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
Hotel & Tourism | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Mining ( Gems & Jewel ) | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | |||
Services | ○ | ○ | ||||||
Source : TVP Japan作成 |
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