ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー金融業界の不幸な歴史(金融業界の年表)

1960年代まで東南アジアの雄として世界でも有数の輸出大国であったミャンマー

シンガポール建国の歴史においては、リークアンユーはヤンゴンを都市国家のモデルにしたとまで言われている。今の両国の差からは到底想像出来ないだろう。

1962年にネ・ウィンによる軍事クーデターが勃発したことが全ての不幸の始まりだった。

1963年には全ての民間商業銀行が国有化されたが、その中にはチャータード銀行(Chartered Bank)OCBC(Overseas Chinese Banking Corporation)等も含まれていた。

外国為替取引量は、当時周辺国を圧倒する規模を有していたと推定される。

60年代においては高度な金融システムを有していたミャンマーは、その後四半世紀にわたる停滞により周辺国に対して大きく出遅れる。

特にこの間行われた3度の廃貨措置(※)は国民のミャンマーチャットの信認を失わせ、金融システムを根本から毀損させた。

※ 廃貨措置 : 軍事政権は、1964年5月(1000チャット紙幣)、1985年11月(20、50、100チャット紙幣)、1987年9月(25、35、75チャット紙幣)と3度にわたり高額紙幣を突如無効化。国有化された銀行に対する不信から自宅にタンス預金をしていた国民は大きな損害を被った。当該措置に伴う国民の自国通貨に対する不信は、現在に至っても依然影響が残っていると思われる。

 

<1990年代による改革(アジア通貨危機迄)>

1990年代(97年まで)は、金融業界再興に向けた改革の時期であった。

1990年に中央銀行法及び金融機関法が成立。1992年には民間銀行ライセンスの交付が再開した。

1996年に証券取引所の準備会社としてのミャンマー証券取引センターが設立。同時に証券取引法の整備も進められた。

保険業界にいたっても民間開放に向けて保険事業法が1996年に成立した。ここまでは良い感じで進みつつあった。

しかし、これらの流れは、アジア通貨危機により立ち消えさることになる。金融業界の暗黒の時代は、1998年より民政移管を果たす2011年頃まで長らく続くこととなった。

なお、上の時間軸の中では、日系企業によるミャンマー進出も加速していた。1996年7月にANAがヤンゴンとの直行便(関空)を就航(※)、11月にはヤンゴン日本人商工会議所が発足98年2月に三井物産と現地企業が共同でミンガラドン工業団地をオープンしていた。日本だけでなく、国際社会がミャンマーの対外開放に展望を抱いた時期であった。

(※)その後2000年3月で運休、2012年にビジネスジェット週3便で再開。

 

<ミャンマー金融業界の年表>

1861 Indian Presidency Bank of Bengalヤンゴン支店(最初の銀行)が開設
1886 英清ビルマ条約によりイギリス領インドに併合
1914 会社法(Company Act)成立
1948 ビルマ連邦として独立
1962 ネ・ウィンによる軍事クーデター、ビルマ式社会主義体制開始
1963 全民間商業銀行(現地銀行10行、外国銀行14行)が国有化
1969 国有銀行がビルマ連邦人民銀行(Peoples’ Bank of Union of Burma)に統合、モノバンク制開始
1976 ビルマ連邦人民銀行が解体、ミャンマー中央銀行、ミャンマー経済銀行、外国為替銀行、農業銀行、保険公社の5つに分離
1990 中央銀行法(旧Central Bank of Myanmar Law)、金融機関法(旧Financial Institution of Myanmar Law)が成立
1992 民間銀行へのライセンス交付開始(First Private Bank)
1993 大和証券グループがミャンマー財務省と資本市場創設に向けたMOU締結。ミャンマー保険法(Myanmar Insurance Law)が成立
1994 民間銀行への外為業務を認可
1996 大和証券グループとミャンマー経済銀行の合弁でミャンマー証券取引センター(Myanmar Securities Exchange Centre)設立。保険事業法(Insurance Business Law)が成立。
1997 アジア通貨危機勃発
1998 民間銀行へのライセンス発効停止、民間での外為認可を撤回
2003 ミャンマー金融危機、最大手民間銀行Asia Wealth Bankの破綻。米国の追加経済制裁の発効(対緬貿易中止)
2008 国民投票により新憲法が制定
2010 民間銀行へのライセンス発効再開(1997年以降初、4社に対して交付)。新憲法に基づく総選挙実施
2011 USDP政権発足。MPU(Myanmar Payment Union)創設、ATM及びキャッシュカードが導入再開
2012 固定相場制から管理フロート制へ移行。外国為替管理法(Foreign Exchange Management Law)制定。外国投資法が成立
2013 新中央銀行法(Central Bank of Myanmar Law)成立。証券取引法(Securities Exchange Law)成立。民間保険会社12社へライセンス認可
2014 外国銀行9行に支店ライセンスを交付
2015 外資JVを含む企業5社に証券ライセンス付与。ティラワ経済特区内での保険販売を日系損保3社に特例認可。総選挙でNLDが圧勝。ヤンゴン証券取引所が開設。
2016 NLD政権発足。新金融機関法(Financial Institution Law)成立。ヤンゴン証券取引所に第一号企業が上場。新投資法(Myanmar Investment Law)成立
2017 新会社法成立

 

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