ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマーの会計基準(MFRS:Myanmar Financial Reporting Standards)とACCAの普及

ミャンマーでは、会計基準として国際会計基準(IFRS : International Financial Reporting Standards)を2009年に採択し、これをMFRS(Myanmar Financial Reporting Standards)として導入している。

また中小規模事業者向けの基準(MFRS for Small and Medium-sized Enterprises)も同様に整備されている。

但し、2017年11月末現在、2009年以降のIFRSの追加導入部分の反映はなされておらず、このため、IFRSとMFRSには差異が生じているのが実情である。MFRSとして導入されているのは、以下の8号までだ

MFRS 1 First-time adoption of International Financial Reporting Standards
MFRS 2 Share-based Payment
MFRS 3 Business Combinations
MFRS 4 Insurance Contracts
MFRS 5 Non-current Assets Held for Sale and Discontinued Operations
MFRS 6 Exploration for and Evaluation of Mineral Resources
MFRS 7 Financial Instruments: Disclosures
MFRS 8 Operating Segments

MFRSはIFRSは同一か、との質問がよく聞かれるが、その答えは2009年時点においては同一、それ以降根本部分では同一であるものの差異が徐々に広がり始めているということになる。

 

<会計制度等を取り巻く環境>

会計にかかる法制度に関しては、会計検査長官府(Office of the Auditor General)が担い、会計整備にかかる規制当局としてMAC(Myanmar Accountancy Council)が設置されている。

MACは会計基準の採用やCPAライセンス発行の機能を担っている。Auditor GeneralとMACの会長(Chairman)は兼務されている。

また、会計士協会については、2003年にMICPA(Myanmar Institute of Certified Public Accountants)が設立され、2015年MAC LawではMICPAの機能を会計専門家組織として位置付け、国際的な会計スタンダードに近づけるべく会員メンバーに対する研修等の機能が担わされている。

組織としては分離されているものの、MACの委員とMICPAのEC(Executive Committee)メンバーは兼務が多く見られ、実質的には一体的に運営されている部分もある。

ミャンマーのCPAライセンス保持者は約3000名、そのうち監査実務を担う人材は1200名程度と極めて限られている。このことが監査の質とスピードの遅れにつながっているとの指摘もなされている。

 

<ACCAの普及>

上記の通り現地公認会計士が質的・量的に不足する中、ミャンマーではACCAの学習者が増えている

ACCAの学習者が多い背景としては、現地会計士の給与を含む待遇が低い現状の中で、国際会計基準に沿ったACCAライセンスを取得する方が、海外での就業経験或いは国内においても給与が相対的に高い外資系企業への就職が目指せるという事情があるようだ。

但し、現地企業の監査証明に署名出来るのはあくまでも現地の公認会計士資格を有すものであって、現状ACCAライセンス保持者は署名権限は有していない。

 

<ACCAとは>

ACCAとは、Association of Chartered Certified Accountants(英国勅許公認会計士)の略であり、英国の公認会計士資格の一つである。ライセンス保持者は約12万人程度にのぼると言われている。ACCAはミャンマーにおけるIFRSの技能向上に向けてMICPAと覚書(MOU)を締結し、支援している。

ACCAの試験は選択科目を含む以下の全16科目で構成されており、そのうち14科目に合格し、かつ3年の実務経験を積むことでライセンスが与えられる

企業において会計担当者を採用する場合にACCAの合格科目数を見る場合もある。

候補者の責任のレベル(CFO、責任者、実務補助者等)や企業規模にもよるが、日本の本社の経理部・財務部等とのコミュニケーションを行うためには、可能であればPart2を通過しているレベル、少なくともF6、F7、F9を合格している候補者が望ましいと言える。

 

基礎レベル(Fundamentals)

知識科目(Part1)

F1 Accountant in Business(職業としての会計士)

F2 Management Accounting(管理会計論)

F3 Financial Accounting(財務会計論)

技能科目(Part2)

F4 Corporate and Business Law(企業法)

F5 Performance Management(目標管理論)

F6 Taxation(租税法)

F7 Financial Reporting(財務報告論)

F8 Audit and Assurance(監査論)

F9 Financial Management(財務管理論)

専門レベル(Professional)

必修科目(Part3必修)

P1 Governance, Risk and Ethics(企業統治論)

P2 Corporate Reporting(企業報告論)

P3 Business Analysis(企業分析論)

選択科目(Part3選択、以下のうち2科目を選択)

P4 Advanced Financial Management(上級財務管理論)

P5 Advanced Performance Management(上級目標管理論)

P6 Advanced Taxation(上級租税法)

P7 Advanced Audit and Assurance(上級監査論)

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