ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマーの金利事情(ミャンマー中央銀行が無担保貸出し金利を設定)

ミャンマー中央銀行(CBM:Central Bank of Myanmar)は、2019年1月14日、無担保貸付けにかかる金利の上限を16%に設定する指令(Directive)を公表した。施行は2月1日付となる。

CBMはこれまでも、企業の資金調達環境を改善する観点から無担保による貸出しを認める方針を打ち出してきたものの、金利の設定については明らかで無かった。企業側の負担軽減を意図した金利設計が期待されていた。

ミャンマーの銀行は、不動産等の担保 (他にも貴金属、国債等、CBMが担保の範囲を指定) を前提とした貸付けを中心に行ってきており、担保付きの融資は13%の貸出金利の上限が設けられている。銀行にとってよりリスクの高まる無担保の貸付けについては、更に3%の上乗せが認められることになったわけである。

なお、この16%については手数料等を含む金利として定められており、企業側が実質的に負担する上限となる。従前も担保付き融資について、13%に加え銀行が申込み手数料、1年ごとの更新手数料等の名目で実質的に14%程度の対価を得てきたことが問題視されたことがあった。無担保融資に伴う与信管理等は、銀行にとって追加の対応が必要になるが、これに伴う手数料の徴収は認められず、全て「込み込み」の運用が求められる。

これまで、ミャンマーの企業は担保があれば銀行から13%の貸付けを受けられ、担保が無ければノンバンクから24%-36%程度での資金調達を余儀なくされてきた。

13%から24%の間は、言わば「真空地帯」となっており、そこに、企業の成長性、財務の健全性等の判断は特段入って来なかった。今回の措置は、その真空地帯を埋める役割が期待されている。

但し、あくまでも個人的な意見ではあるが、当面は本措置を元にした無担保貸し付けは実際には生じないものと考えている。理由は主に以下の4点にある。

(1)企業側に財務健全性を示すための会計体制が未整備、かつ会計監査(外部監査)に対する信頼性が低いこと

(2)長く銀行による与信活動が限定的であったことに伴い、銀行側に企業財務の信頼性を判断出来る審査体制が十分備わっていないこと

(3)16%の金利設計は、企業側にとっては魅力的に映るものの、銀行にとってリスク対比の対価としては低すぎると考えられること

(4)ミャンマーの銀行は、足元相当程度の不良債権問題を内包しており、リスク性の資産の上積みには消極的な対応となると考えられること

短期金融市場や、証券市場等の直接金融を含む金融機能のエコシステム自体の形成はミャンマーの経済成長にとって不可欠な要素である。

たとえ短期的な結果を伴わないものであったとしても、地道な対応の一つ一つが長い目で見れば重要な市場育成につながるものと信じたい。

関連記事 : ミャンマーの金利事情に激変(コロナ対応で政策金利を3度の連続利下げ。ミャンマー経済へ与える影響は?) 2020年5月4日

NEOMONEY
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