ミャンマー日系進出企業数と進出業種(サービス業が先行、エネルギー不足を背景に製造業は依然様子見)
ミャンマーへの進出企業数が延びてこない。
新政権(NLD政権)へ移行した2016年から明らかに新規の進出ニーズが落ち込んでいるように感じる。ミャンマー進出支援を行う当社にとっても2017年は非常に厳しい年であった。
<ミャンマー日系進出企業数の推移>
日系による進出企業数は、ミャンマー日本商工会議所(JCCM : Japan Chamber of Commerce and Industry, Myanmar)の会員数で概ねの状況を把握することが出来る。
JCCMに加盟していない企業も一部見られるが、全体のトレンドを把握するのに支障は無いだろう。
2017年11月末現在、JCCMには369社が加盟しており、その業種別の内訳を以下の表の通りまとめた。
Source : ミャンマー日本商工会議所より(株)TVP Japan 作成
進出企業の拡大に伴って1996年に61社で発足したJCCMの会員数は、その後アジア通貨危機まで増加し、98年末時点では86社まで拡大していた。
その後2000年代を通じて大きく増減することなく、2011年の民政移管(USDP政権)を迎える。
2012年以降の会員数の増減(ネット)を見ると以下の通りとなっている。
特に2012年~2014年はミャンマーブーム真っ盛りの時期であり進出企業数も前年末対比で50%を越える急激な伸びを3年連続で示している。
2015年以降ブームは落ち着いたものの、引き続き高い進出ニーズが継続してきた。
変調はミャンマー経済の落ち込み時期と概ね一致しており、2016年後半以降訪れた。一部撤退を決める企業も現れ始め、全体の伸びは急速に鈍化してきた。
2017年は11月末時点で増加数は21社、前年末対比わずか6%の増加となっている。
2012年 : 32社(60%)
2013年 : 61社(72%)
2014年 : 74社(51%)
2015年 : 64社(29%)
2016年 : 64社(23%)
2017年(11月末時点迄) : 21社(6%)
<社数の右側の比率は前年末時点との増加率>
<東南アジア各国の日系企業進出企業数の業種別内訳(2016年4月末時点調査)>
ミャンマーブームを経ても、日系企業の進出数を全体として見ると、他のアセアン諸国と比べてミャンマーは圧倒的に出遅れている。
5000社に迫るタイを例外としても、比較の対象となり得るベトナムは2000社を超えている。直近のミャンマーの日系企業数から見ても6倍超の水準である。
昨年より施行されている新たな投資法や、今後運用が開始される新会社法により外資系企業のミャンマー進出の障害は確実に減少していくはずであり、今後の企業数の増加がどの程度まで至るのかが注目される。
<東南アジア各国における日系進出企業の業種別内訳(業種別割合比較、2016年4月末時点調査)>
東南アジア各国における進出企業数を業種別の割合にして比較したものが以下の表の通りである。
今後ミャンマーへどのような業種の企業が進出して来るかを占う上で非常に興味深い。
まず、左のタイ、インドネシア、マレーシアに目を向けると、製造業が概ね5割、サービス業が1割、卸売業が約2.5割となっており、全体の進出企業数は各国それぞれ大きく異なるものの、比率はほぼ一致している。
3カ国は、地理的にはマレー半島を南北に位置している。
あたかも黄金率であるかのように見事な一致を示しており、これをアセアン第一グループと位置付けることが出来る。
アセアン第二グループは、ベトナム、フィリピンの2カ国であり、上記の3カ国に比べると相対的に経済全体の成長も遅れている。
両国は、製造業が約4割、サービス業が2割弱、卸売業が約2.5割と、上記3カ国と比較し製造業の比率が低い分がサービス業に回っていると見ることが出来る。
さて、ミャンマーはどうだろうか。エネルギー不足や工業団地の未整備等により製造業は他のアセアン内先進国と比べて低く、サービス業が全体の3割程度を占める極めて歪んだ構造になっている。
ミャンマーの製造業比率は、今後5から10年程度で3割程度まで上昇する可能性はあるものの、上記の第一グループ及び第二グループに並ぶ程の比率には届かない可能性がある。
これは日系メーカーから見たミャンマー市場の魅力は周辺国と比べて決して高くは無く、今後エネルギー問題には予想以上に時間がかかる一方、人件費の高騰が先行し工場を置く合理性が高まらないと想定されるからだ。
消費市場としてのミャンはーでは、サービス業及び卸売業が引き続き一定の位置付けを占めるだろう。小売業については現状では進出に制限があるものの、市場自体の魅力は高く、外資規制の段階的な解消によって企業数も拡大していくものと予想される。
Source : TDB(ASEAN進出企業実態調査)より(株)TVP Japan 作成
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