ミャンマー新会社法を解説(外国会社の定義変更、常駐取締役規定の新設)
2018年8月1日に施行されたミャンマー新会社法を地道に解説。
初回は、注目度の高い外国会社の定義の変更、及び常駐取締役の取扱いについてから始めていく。
<外国会社の定義>
今般の会社法改正の最大の目玉の一つとなった外国会社の定義の変更だ。
旧会社法では1株でも外国人・外国企業が株式を保有すれば、その会社は外国会社と見做されてきた。
また、既にあるミャンマー企業が外国企業のカテゴリーに変更するということも長らく実務上認められておらず、従って外国企業はミャンマー企業へ直接的に出資することが一切出来ず、新たにJVを設立するしか資本提携の道が無い状況が生じていた。
今般の会社法改正では、外国会社(Foreign Company)は以下の通りの定義に変更された。
第1条(c)(xiv) (Foreign Companyの定義)
“foreign company” means a company incorporated in the Union in which an overseas corporation or other foreign person (or combination of them) owns or controls, directly or indirectly, an ownership interest of more than thirty-five per cent;
外国会社は、外国企業或いは外国人に35%超の”Ownership Interest”を直接的・間接的に持たれた企業とされたわけだ。
逆に言えば、外国人・企業が35%まで保有していたとしても、その企業はミャンマー企業(内資企業)となるという点がポイントである。
ちなみに、旧会社法では「ミャンマー企業」と「外国企業」というそれぞれの定義を設けていたが、新法ではミャンマー企業というものは無く、「企業」というものがあってその中に「外国企業」が一部含まれている、という様な概念変更がなされている。
次に、上記のOwnership Interestとは、要は「所有権」ということであるが、具体的な定義については以下の通り定められている。
第1条(c)(xxii)(Ownership Interestの定義)
“ownership interest” means a legal, equitable or prescribed interest in a company which may arise though means including:
(A) a direct shareholding in the company;
(B) a direct or indirect shareholding in another company which itself holds a direct shareholding, or an indirect shareholding, in the first company; or
(C) through an agreement which provides the holder with a direct or indirect right to exercise control over the voting rights which may be cast on any resolution of the company;
(A)は直接的に株式を保有している状態、(B)は他の会社を通じて間接的に株式を保有している状態、(C)は契約等の締結により議決権行使を通じて実質的に支配をしている状態、をそれぞれ指している。
つまり、方法の如何をよらず、外国人に実質的に35%超の支配力を持たれれば、その企業は外国企業として見做す、とされた訳である。
<常駐取締役の新設>
新会社法では、これまで無かった常駐取締役についての規定が新設された点も注目されている。
全ての企業は、以下の通り最低1名の”常駐者(Ordinarily Resident)“である取締役を置くこととされた。
第4条(企業の基本要件)
Essential requirements of companies
(a) A company registered under this Law must have:
(v) subject to sub-section (vi), at least one director who must be ordinarily resident in the Union;
(vi) if the company is a public company, at least three directors, at least one of whom must be a Myanmar citizen who is ordinarily resident in the Union
さて、ここで何を以って常駐=”Ordinarily Resident”と見做すのか、という事であるが、以下の通り年間183日以上をミャンマー国内で滞在している状態として定義されている。
第1条(c)(xix)(Ordinarily Residentの定義)
“ordinarily resident” means a person who is a permanent resident of the Union under an applicable law or is resident in the Union for at least 183 days in each 12 month period commencing from:
(A) in the case of an existing company or a body corporate registered under a repealed law, the date of commencement of this Law; and
(B) in the case of any company or body corporate registered under this Law, the date of registration of the company or body corporate.
(A)では新会社法施行前からある既存の会社についてであり、その場合は会社法施行日からカウントして12カ月、(B)は新会社法施行後に新たに会社を新設する場合であり、その場合は会社登記を行った日から起算して12カ月とされている。
一方、ここで以下の通り一定の期間の免除規定がある点に注意が必要だ。
第469条(既存会社の常駐取締役の登記)
Existing registered companies to be registered
(a) Subject to section 421(d), if a company or other entity was registered under the previous law and that registration was still in force immediately before the commencement of this Law, the registration of the company or other entity has effect (and may be dealt with) after the commencement as if it were a registration of the company or other entity of the corresponding type under Part II of this Law.
(b) A company to which sub-section (a) applies will have until the end of the transition period to appoint a director who is ordinarily resident in the Union.
(c) An overseas corporation to which sub-section (a) applies will have until the end of the transition period to appoint an authorised officer.
第1条(c)(xlii)(Transition Periodの定義)
“transition period” means the period of 12 months from the date of commencement of this Law;
簡潔にまとめると、要は既にある会社については、常駐取締役の任命について12か月間の移行期間(Transition Period)の間、猶予を認めている。
第469条(c)は、海外企業の支店の場合の取扱いの場合で、Authorised Officerというものが登場するが、これは支店にも同様に常駐責任者が必要ということで、以下の通り規定されている。
第1条(c)(iii)(Authorised Officerの定義)
“authorised officer” means a person ordinarily resident in the Union who is appointed by an overseas corporation to act as its representative for the purpose of this Law
Overseas Corporationというのは、単に海外にある企業ということで、外国企業のミャンマー支店も本規定に該当する。
第1条(c)(xxi)(Overseas Corporationの定義)
“overseas corporation” means a body corporate that is incorporated outside the Union;
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いつも有益な記事をありがとうございます。ミャンマー在住日本人です。
今回の新会社法で外国人の株式投資解放を期待していましたが、現状ですと信頼できるミャンマー人の協力なくしては株券購入は難しいですね。
また今月末に続報が出るというニュースもありましたので期待しています。