外国銀行による地場銀行への出資が解禁へ(ミャンマー中央銀行における改革の背景)
2019年1月29日、ミャンマー中央銀行(CBM: Central Bank of Myanmar)は、ミャンマー地場銀行に対して最大で35%までの外国資本受け入れを認める通知(Regulation No. 1/2019)を公表した。
これまで、ミャンマー地場銀行は100%内国資本であることが前提とされ、2014年より外資系銀行の支店開設が認められたものの、外銀の支店の業務範囲は限られた部分に制限され、実質的に内資保護の方針が根付いてきた。
2018年8月1日に施行を迎えた会社法は、外国資本が35%まで入った企業であってもミャンマー内国企業としてのステータスを与える変更をもたらしたが、銀行を所管するCBMは同規定は銀行には適用しない方針を示していた。
この為、会社法施行後も、依然としてミャンマーの銀行は100%内国資本である状態が続いてきていた。
今回のCBMによる外資参入緩和への舵切りは、いずれは認められる見通しではあったものの、会社法施行からわずか半年での適用はサプライズとして受け止められる。
また、金融の根幹機能であるものの、旧態已然の慣習が根強いミャンマーの銀行業界において、リストラクチャリングが進む契機となることが期待される。長期的には経済全体に与えるインパクトはポジティブであろう。
<改革の背景>
2018年後半より続く、外銀支店に対する業務範囲の拡張、無担保融資金利枠の設定等、CBMにおける矢継ぎ早の改革は、CBM内部における保守的な体制に揺るぎが生じていることが推察される。
特に、2017年7月に副総裁(Deputy Governor)に就任したU Soe Thein(ソーテイン)の影響は無視できないだろう。
U Soe Theinは、財務歳入省(現 計画財務省)の予算局の副局長から、ミャンマー証券取引センターの役員を経た人物で、一時は証券取引委員会(SECM)の委員長、或いはCBMの総裁候補としても目され、現在は三名いる副総裁の一人で改革派として知られている。
ちなみに、2018年7月、5年間の任期(2013年7月の中銀法改正が起点)を終えた総裁のU Kyaw Kyaw Maungは大統領より再選を受けた。保守派の総裁は更に5年の任期を得た。
1939年生まれの同氏は2019年4月に80歳を迎える。議会の中では、同氏の改革姿勢が消極的であることを理由に、再選に反対する勢力も見られた。
が、再選後に中銀の姿勢が変わってきたことは偶然とは思われず、再選の際に何らかの条件が付されたと推察する見方もある。
<参考:金融機関法との関連>
今般の外資参入に際し、合弁を望む銀行は、CBMに対して外資系銀行との間の合弁契約書やその他出資条件等にかかる書類と共に申請を行う必要があることとされた。
申請については、金融機関法の規定を準用することが求められているため、参考までに同法における取扱いを以下一部抜粋する。
金融機関法 第42条 (a)
Any person, alone or in concert acquiring the substantial interest of a bank shall submit to the Central Bank a written application accompanied by any other supporting documents as may be specified in the regulations issued by the Central Bank.
何人も銀行の「Substantial Interest」を保有する場合にはCBMに対して書面で届け出を行わなければならない。
金融機関法 第45条
No person shall, alone or in concert with one or more persons, enter into any agreement or arrangement to acquire substantial interest in a bank without the prior approval of the Central Bank.
何人も、事前のCBMの承認無くして銀行の「Substantial Interest」を持つための契約や合意をすることは出来ない。
ここでいう「Substantial Interest」は、以下の定義が設けられている。
今回の規制緩和以前より、CBMは一定の比率の株主の変更については、事前にCBM承認が必要な運用がなされてきた。(ここで参照している現行の金融機関法2016年では10%としているものの、それ以前の金融機関法1990年では、第18条C項において15%以上の株主持分の変動をCBM承認事項としていた)
金融機関法 第2条 (ll) (「Substantial Interest」の定義)
Substantial interest means owning, directly or indirectly, ten percent or more of the capital or of the voting rights of a financial institution or, directly or indirectly, exercising control over the management of the financial institution, as the Central Bank may determine.
「Substantial Interest」とは、間接・直接によらず、資本又は議決権の10% 以上を有すこと、或いは間接・直接によらず当該金融機関の経営を支配することが可能な状態を指している。
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