ミャンマー資本市場創設メンバーが語るミャンマー経済・投資の実際

ミャンマー新会社法を解説(年次報告:アニュアルリターンAnnual Returnとは)

2018年8月1日に施行されたミャンマー新会社法を地道に解説。

第5回となる今回は、年次報告(Annual Return)について取り上げる。

<年次報告とは>

旧会社法では、全ての会社に対して企業情報を網羅的に記したアニュアルレポート(Annual Report)の提出を義務付けていた

しかし、実際には必ずしも決算情報等を含む書類がDICAに対して届けられてはおらず、実務運用が追いついていなかった。

今般の改正では、全ての会社に対して年次報告としてのアニュアルリターン(Annual Return)を求め、その内容を簡易なものにすることで、登記情報が常に最新の情報になるような対応がなされている。

<年次報告にかかる規定>

年次報告については、新会社法97条に規定が設けられている。

また、DICAは年次報告のフォーマットを公表しており、各社はネット上のフォームに記入していくだけで年次報告を簡単に済ませることが出来る。

年次報告(Annual Return)のDICA規定フォーマットは、こちら

第97条 年次報告

Annual return, list of members and summary
(a) Every company must within 2 months from its incorporation and thereafter once at least in every year (but no later than 1 month after the anniversary of its incorporation) file a return of its particulars with the Registrar in the prescribed form.

a項は、提出のタイミングについて。

全ての会社は、設立日から2カ月以内に、また年に少なくとも1回は、年次報告を提出する必要がある。

「少なくとも1回」であるから、変更などが生じた度に出すことは妨げられていないが、通常は、決算が終わって取締役の改選等にかかる株主総会開催後に提出するような運用になるだろう。

ただ、上記の括弧書きの中では、毎年の設立日から1カ月以内には出すようにとの但し書きがあるのでこの点は注意したい。

次に、b項では以下の項目のような記載事項について定めているが、実際にはフォームを埋めて提出すれば足りる為、これらを意識する必要は基本無いだろう。

(b) Save as may be excepted under any applicable law, the return must include the following information:
(i) the registered name of the company; (登記社名)
(ii) the registration number of the company; (登記番号)
(iii) the address of the registered office of the company and, if different, the address of the place where the register of members is kept; (会社所在地)
(iv) in the case of a public company, a list of the 50 members (or such other number of members if the company has less than 50 members) holding the largest number of shares in the company and their respective names, addresses and nationalities and shareholdings; (公開会社の場合、株主上位50名の名前、住所、国籍、保有株数)
(v) in any other case, a list of all members of the company and their respective names, addresses and nationalities and shareholdings and a list of persons who ceased to be members since the date of the last filing; (非公開会社の場合、株主全員の名前、住所、国籍、保有株数、また前回の年次報告から株主でなくなった者のリスト)

(vi) the date of the last annual general meeting of the company (if applicable); (直近の株主総会の開催日)
(vii) particulars of the company’s principal activity or activities at the date to which the accounts of the company are made up and at the date of the annual return; (主な事業活動)
(viii) a summary distinguishing between shares issued for cash and shares issued as fully or partly paid up otherwise than in cash; (現金拠出による株式及び現金以外による払込みによって発行された株式の状況)
(ix) the amount of the share capital of the company, and the number of the shares into which it is divided;(発行済み株式数)
(x) the amount called up on each share; (株主に対する資本の払込み要請を行った金額)
(xi) the total number of shares forfeited or cancelled since the date of the last return;(前回の年次報告以後、廃止された株式の数)
(xii) whether the company has either become or ceased to be a foreign company since the date of the last return and the date on which such change occurred; (前回の年次報告以降、新たに外国会社になったか、或いは外国会社で無くなったか、またそのような変更が生じた日)
(xiii) the names of the company’s subsidiaries, holding companies and ultimate holding company, if any; (子会社、持株会社、究極的持株会社の名称)
(xiv) the names, addresses, gender and nationalities of the persons who at the date of the return are the directors of the company and of the persons (if any) who at the said date are the secretaries of the company, and the changes in the personnel of the directors and secretaries since the last return together with the dates on which they took place; (年次報告届け出時点における取締役及び秘書役の名前、住所、性別、国籍、並びに前回の年次報告以後変更がある場合は、その変更が生じた日)

(xv) confirmation that the mortgages and charges which are required to be registered with the Registrar under this Law have been registered; and (登録義務のある担保財産についての登録確認)
(xvi) such other items as may be prescribed from time to time.

c項では、年次報告の提出に際し、取締役または秘書役が、虚偽の記載が無いことについて確認し署名することを求めている。

(c) In addition to filing such particulars with the Registrar, the above list and summary must be contained in a separate part of the register of members. The return and copy maintained with the register must be signed by a director or by a secretary of the company and state that the list and summary state the facts as they stood on the day aforesaid.

最後にd項では、非公開会社にあっては、直近の年次報告以降、一般大衆に対する株式・社債等の募集活動を行っていないことについて確認した署名付き証明書を年次報告と合わせてDICAに提出しなければならないとしている。
(d) A private company must send together with the annual return required by sub-section (a) a certificate signed by a director, secretary or other officer of the company that the company has not, since the date of the last return or, in the case of a first return, since the date of the incorporation of the company, issued any invitation to the public to subscribe for any shares or debentures of the company.

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コメント

    • 岩田岳久
    • 2019年 1月 25日

    新会社法における定款の取り扱いがよく理解できました。
    定款の変更のためには特別決議が必要で、4分の3以上の株主の変更が必要ということは、60:40の出資比率の場合、変更ができなくなる可能性がありますが、対応策はありますでしょうか?

    別件ですが、上記の年次報告のフォーマットを見ようと「こちら」をクリックすると、定款の雛形が出てきます。
    年次報告のフォーマットが見れるようにしていただけますか?

      • shin
      • 2019年 1月 27日

      お問い合わせありがとうございます。

      会社法上の規定では、相手方が4割の議決権を有していれば特別決議における否決権を有すことになりますので、相手方の同意なく定款の変更は出来ないことになります。

      但し、定款には通常一般条項を盛り込み、変更の必要性が生じるのは、社名の変更、会社形態の変更、優先株の発行等、極めて限られた状況かと思われます。
      合弁会社を設立する場合には、モデル定款によらず新たにカスタマイズした定款の作成が必要となりますが、定款にはなるべく過剰な内容は盛り込まず、合弁契約書において定めることで柔軟性を保つということになろうかと思います。

      また、年次フォーマットのリンクの過ちがありまして大変失礼いたしました。修正しておりますのでご確認ください。

      みゃん株ドットコム

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