ミャンマー情勢の最新情報 Vol.25(3月27日の国軍記念日に向けた徹底弾圧が加速、欧米の制裁が発動)
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※ 本記事は、2021年3月23日(火)ミャンマー時間23:00に執筆しています。
※ クーデター発生日よりClubhouseにて音声での情報発信を行っています(@myanshin)。ミャンマーの今を知って頂きたいという「信念」に基づいてお届けしています。本ブログと共にお聴き頂ければ、ミャンマー情勢は概ね把握可能なように努めております。また、クーデター後の「ヤンゴンの街並み」を企画・編集ゼロでYoutube配信し始めました。
※ 企業向けの情勢分析レポートも別途賜ります。また取材につきましても E-mailにてご連絡頂ければと存じます(info@tvpmyanmar.com) 。
※ 発生日からの時系列、2月1日(月)、2月2日(火)、2月3日(水)、2月4日(木)、2月5日(金)、2月8日(月)、2月9日(火)、2月10日(水)、2月11日(木)、2月12日(金)、2月14日(日)、2月16日(火)、2月17日(水)、2月19日(金)、2月21日(日)、2月22日(月)、2月23日(火)、2月25日(木)、2月28日(日)、3月4日(木)、3月7日(日)、3月10日(水)、3月14日(日)、3月18日(木)の記事も合わせてご覧ください。
Trust Venture Partnersでは混迷を深める現地情勢を受けて、日緬間の送金・現地法人の内部監査対応・休眠化及び休眠時対応・退避/ビザ・その他緊急時対応等、様々なご相談を頂いております。 また、現地の情勢分析を踏まえた今後の方針・シナリオ設計、合弁解消、資産売却、事業撤退手続き等も含め、現地の日本人及びミャンマースタッフにより幅広いご支援が可能です。 ご不明な点等ございましたら是非お気軽にご連絡頂ければと存じます(info@tvpmyanmar.com)。
(以下、本文)
3月27日(土)の国軍記念日を間近に控え、ミャンマー国内はかつてないほどの緊迫感に包まれている。
明日24日(水)には全土でサイレント・ストライキが呼びかけられている。既に現地流通最大手のシティーマートや日系のイオンオレンジも全店の閉店を公表しており、国民の反発心は極限まで高まりつつある。
足元、27日に向けて若者を中心に一斉蜂起に向けた準備が進められていることが気がかりだ。軍側の弾圧を予め想定し自衛の為の武器の流通も進んでいる模様だ。これまで3月3日(国連報道では死者数38名)、また3月14日(AAPP報道では死者数74名)と甚大な被害者が生じてきたが、国民の怒りが発散された時に更なる惨劇が生じる可能性も否定出来ない。これ以上、ただ一人の命も失われることが無いように只々祈るばかりだ。
現地ではメディアへの言論統制、また市民の情報発信手段を奪うためのインターネット遮断を通じて、この一週間程で明らかに情報把握は困難になってきている。情勢分析が困難になることに加え、国際社会からの関心が失われることも強く懸念される。
<欧州及び米国による経済制裁が発表>
3月16日にフランスのル・ドリアン(Le Drian)外務大臣が言及していた通り、3月22日(月)の欧州連合(EU)外相理事会においてミャンマー国軍関係者11名に対する制裁が採択、即日施行された。対象者にはEUへの渡航禁止及び域内資産の凍結が科された。
今回のEUの経済制裁にかかるポイントは3点。
1点目は、同時に出ると期待されていた国軍関連企業が含まれてこなかったこと。
今後、軍系の財閥(MEHL : Myanmar Economic Holdings LimiteおよびMEC : Myanmar Economic Corporation)等に対する追加制裁も速やかに発動されることが見込まれるが、現時点では対象範囲の詳細を詰めている段階と思われる。MEHL及びMECに対しては、米国の制裁も依然発動されておらず、その行方が注目されている。いずれの国が先陣を切るかが重要となってくるだろう。
2点目は、ミャンマー経済に対して大きな影響を与え得る一般特恵関税(GSP : Generalized System of Preferences)が見送られたこと。
ミャンマーの主要産業の一つである縫製業においてはEU向けの輸出が全体の5割超に上ることから、仮にGSPが廃止されれば、特に国内の雇用に大きな影響を与えることが懸念されていた。EUとしては一般市民への負の影響を避ける意図があったと見られ、この判断基準は今後の制裁対象を検討する際にも重要となってくるだろう。
3点目は、米国と歩調を合わせた対応をしたこと。
米国は同日、ミャンマー向けの経済制裁第5弾を発表。新たに以下の2個人と2団体を制裁対象に加えた。米国の追加内容自体は全くサプライズが無いマイナーな調整のレベルと言えようが、欧州・米国の対応の焦点が中国に当たる中で、ミャンマーへの対応も歩調を合わすことが確認されたことは、今後の動向を占う上で重要になってくるかもしれない。
(米国による経済制裁の追加範囲)
・タンライン(Than Hlaing):警察庁長官(Chief of Police)及び内務省副大臣(Deputy Home Affairs Minister)
・アウンソー中将(Lt-General Aung Soe):BSO(Bureau of Special Operations)指揮官 ※ミャンマー国軍は6つのBSOによって構成されており、各BSOに指揮官が存在。通常BSOの指揮官は中将クラス。
・第33軽歩兵部隊(33rd Light Infantry Division)※クーデター後マンダレーに派兵
・第77軽歩兵部隊(77th Light Infantry Division)※クーデター後ヤンゴンに派兵
‐米国の財務省による公表文はこちら
‐米国の国務省による発表文はこちら
<ASEAN首脳会議の開催に向けた調整>
ASEAN域内では今般のミャンマー情勢を巡って3月2日にASEAN外相による非公式会合(IAMM : Informal ASEAN Ministerial Meeting)が開催。議長声明では、ミャンマー国軍への一定の配慮から「全ての当事者に暴力活動を控え、建設的な対話等を通じた平和的解決」を求めるとの内容に留まっていた。
※ IAMMの議長声明の全文はこちら
その後も悪化の一途を辿るミャンマー情勢を受けて、3月19日、インドネシアのジョコウィドド(Joko Widodo)大統領はASEAN首脳会議の開催を呼びかけた。外相会合から更に格上げすることでASEANとしての一致した事態収束策を協議する意図と読み取れる。
既にシンガポール及びマレーシアは呼びかけに応じている模様であり、シンガポールのバラクリシュナン(Balakrishnan)外相は、早速調整のために加盟国への歴訪を開始。22日(月)には本年のASEAN議長国であるブルネイを訪問、続いてマレーシア、インドネシアを訪問予定だ。
全会一致の原則を持つASEANでは、これまで加盟国間で温度差が見られてきた。しかし、当初は内政不干渉を旗印に静観してきたベトナムもミャンマー国軍への態度を硬化してきたようだ。その意味では、軍事政権にあるタイを他の加盟国が引き込めるかどうかに今後の焦点が集まってくるかもしれない。
<その他のアップデート>
(インターネットの遮断は当面継続)
3月23日(火) 、国軍報道官は3月15日から段階的に強化しているインターネット遮断を当面の間(”a certain time period “)継続するとコメント。デモ抗議活動が一定程度収束しない限りは回線の復活を行わないスタンスを示した。
(ヤンゴン各地で停電)
3月22日(月)夜から翌23日(火)にかけて、ヤンゴン各地で停電が発生。確認出来ている範囲の発生場所はタムウェー群区、バハン群区等。国軍側による意図的な電気遮断か否かは不明。
(3月19日のANA便で帰国者続出)
クーデター後3便目となるANAの直行便が3月19日(金)11:30にヤンゴンを離陸し、同日深夜成田へ到着。191名の枠に対して150名が搭乗、うち日本人は134名。搭乗した日本人の話によれば、那覇での給油が影響し到着は午後10時過ぎとなり、その後空港でのPCR等を経てホテルの部屋に入ったのは明け方5時頃(遅い人は6時頃)となった模様。次回便は4月2日に予定。
(オーストラリア人2名が拘束)
3月19日(金)オーストラリア人のコンサルタント2名が拘束。2人は上記のANAの直行便に搭乗し出国する予定であった模様だが、その直前に拘束され自宅軟禁の状態に陥った。両名が拘束された理由は明らかでは無いものの、NGO等の活動に関わっていた可能性についても指摘されている。国軍はここもと海外からの資金が不服従運動に流用されているとの疑惑を元に、関連する団体への調査を強化している流れにある。
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